---------- 棗の場合EX ---------- 僕こと白鳥隆士は、一体誰に恋しているんだろうか。 ほかの誰にも、自分にすら分からない疑問を抱えながら、 先ほど描き終えた絵を見てみる。 「はぁ…」 キャンバスには、二人の少女が描かれている。 一人は、青葉梢ちゃん。僕が下宿しているここ、鳴滝壮の大家さんだ。 箒を抱えながら、母性溢れる笑顔で笑いかけている。 もう一人は、紺野棗ちゃん。梢ちゃんの…多重人格の一人。 伏し目がちにぎこちない笑顔をこちらに向けている。 二人の違いといえば、髪型くらいだ。容姿は全く同一である。 先ほど言ったように、梢ちゃんはあの世にも珍しい多重人格者だからだ。 解離性同一性障害というのが正式名称の病気だ。 最初はほんの少し疑ってしまったが、どうやら正真正銘らしい。 そしてそれが僕の今の最も大きな悩みである。 「それにしても…」 我ながら良く描けたと思う。 なにせ容姿に違いは無いのだ。 それを、彼女達を知る人間なら人目で見分ける事ができる位精密にかき分ける事ができた。 何というか絵から雰囲気が滲み出ている。 それだけ彼女達の事を良く見ているということだろうか。 「はぁ……何やってんだろ僕……」 寝返りを打つと、そこには二週間前から貯めている専門学校の課題がうず高く積まれていた。 僕はもう一度寝返りを打った。 僕は気分転換に廊下へと出た。 そこはすぐ縁側になっていて、庭が広がっている。 何してんだろうも何も、悩みのせいで全然課題が進まない。 というか手さえ付けられない…。 二週間前のあの日から…。 「隆士君…は…私のこと……好き…かも?」 「も、も、もちろんだよ!好きだよ!大好きだよ!」 「…よかっ…た…わたしも…隆士君のこと…大…好き…」 「くああああああああああ!!」 たまらず僕は胸を掻き毟った。 か、可愛いよ、棗ちゃん…。 …悩みというのは他でもない。 僕は…あの日から、棗ちゃん―梢ちゃんの多重人格の一人である彼女を、意識してしまっているみたいなんだ。 僕は、梢ちゃんと付き合っているのにいいのか? 良い訳がない。彼女達は体を共有していても、別々の個人なんだぞ! あの時、僕は彼女に、友達として好き、とちゃんと伝えなくちゃいけなかったのに…。 「あら、白鳥さん」 ふと後ろからした声にびくりと振り返る。 そこには、梢ちゃんが居た。 「お出かけですか?」 首を傾け、ニコリと微笑みかけてくる。 「いや、別にそういう訳じゃないんだけど、外の空気が吸いたくて」 「課題、大変なんですか?」 「うん、まぁ…」 ポリポリと頬を掻く。やってないとはとてもじゃないが言えない。 「そうですか……あの、白鳥さん、今お暇ですか?」 「え?…暇といえば、暇だけど」 「それじゃあ、私の部屋でお茶でも飲んでいきませんか?」 モジモジと手を前で揉みながら、梢ちゃんはそう誘ってきた。 「…」 「…白鳥さん?」 「あ、ああ、ごめん。ちょっとぼーっとしてた。じゃあ、ご馳走になろうかな」 僕も彼女に微笑み返した。 ・ ・ ・ 僕は確かに梢ちゃんが、この子が好きだった。 そう気づいたからこそ、告白したんだ。 そして彼女も僕を好いてくれていた。 僕達は付き合い始めた。本当にうれしかった。 それなのに、僕って奴は、もう他の女性に心移りしている。 本当に最低な奴だ。 僕は梢ちゃんが入れてくれたお茶を啜りながら項垂れた。 ちらりと視線を横に向けると、梢ちゃんが幸せそうにお茶を飲んでいる。 梢ちゃんは凄く可愛い女の子だ。見た目もその性格も。 そして同じ容姿をした棗ちゃんも、また可愛い。 僕はじっと梢ちゃんの横顔を見つめていた。 僕の濁ってしまった気持ちを整理しようとしながら。 ふと、梢ちゃんは顔を俯かせた。 僕は、一瞬だけ、その顔に棗ちゃんの面影を見てしまった。 違う。そうじゃない。 僕は探してしまっていたんだ。 「……恥ずかしいです、白鳥さん」 「……え?」 ボソリと呟やかれた梢ちゃんの言葉を僕は理解することができなかった。 「……その、そんな風に、じっと見つめられると」 そう言うや否や、梢ちゃんは顔を真っ赤にして俯いた。 「あ、ああ……ごめん……その、梢ちゃんが凄く、綺麗だったからさ……」 僕は言ってしまってから後悔した。 本当は、梢ちゃんの姿を通して、別の人の面影を見ていたというのに、 こんな言い訳が咄嗟に出てしまう自分自身に腹が立った。 でも、こんな幻影を見てしまうなんて、やっぱり僕は…棗ちゃんの事が好きなのかもしれない。 ……棗ちゃんに、会いたいな。 「あのさ、梢ちゃん………ッ!!」 僕はハッとして言葉を飲み込んだ。 梢ちゃんは僕の隣でまるで梅干のように真っ赤な顔をして茹っていたのだ。 「こ、梢ちゃん!どうしたの?」 倒れそうになる彼女の体をしっかりと抱える。 「す、すいません…ちょっとクラッと来て…」 クラッとって…でも、僕がさっき言ったことがまずかったのかな…。 告白のときもそうだけど、梢ちゃん、こういうのに弱いから…。 …でも、もしかしたらこれを利用すれば。 今、もう一度彼女にショックを与えたら、棗ちゃんに会えるかもしれない。 「…白鳥さん?」 考えに耽っている僕を、梢ちゃんが心配そうに見上げてきた。 一か八か、僕は試してみることにした。 「梢ちゃん…大切な話があるんだ…聞いてくれ…」 「…はい」 梢ちゃんは僕の神妙そうな雰囲気を悟ってか、真面目に聞こうとしてくれた。 「僕は…僕は…」 「…はい?」 しまった。言い出したはいいが、全然言葉が続かない。 どうすれば梢ちゃんは驚いてくれるのだろう。 素の状態ならいつも気づかずに変なことを言ってしまうのに、考えてしまうと駄目だ。 「僕は、実は…………女なんだ」 苦し紛れに言った言葉はそれだった。もうちょっと上手く嘘をつけないものか。 こんなふざけた事言ったら梢ちゃん怒るだろうな。 ところが、肩を落とした僕の瞳に映ったのは、口元に手を当てわなわなと震える梢ちゃんの姿だった。 「お…んな?」 さっきまで紅潮していた頬は、真っ青に染まっている。 …どうやら梢ちゃんはこの突拍子も無い嘘を信じてしまったようだ。 それならば、あともう一押し…。 僕は半ばやけくそになって彼女の手を取った。 「そうなんだ…ほら触ってみて」 腕で寄せ集めるようにして作った胸の膨らみに手を当てさせる。 普通の人が触れば一発で気づいてしまうようなそれも 今の彼女には柔らかな感触を与えたのだろうか。 「そ…ん……な」 そう片言のように言い残すと、彼女は目を閉じ意識を放棄した。 倒れそうになる彼女の体を抱きかかえる。 「上手くいってしまった…」 ふと重要な事を思い出した。何も変わってしまう人格は、棗ちゃんだけじゃないのだ。 もし、早紀ちゃんや、千百合ちゃんが出てきたら…。 ぶるっと悪寒が走った。この体勢はまずい。 僕は彼女を床にそっと寝かせると、その場から離れ、部屋の隅から彼女の様子を伺った。 しばらくすると、彼女はムクリと起き上がり、瞳を開いた。 そして、おもむろにリボンを解くと、ツインテールになる様に髪を結びなおす。 「あ…」 思わず僕は歓喜の声を上げた。 彼女は―棗ちゃんは僕に気づくと、テクテクとこちらに向かって歩いてきた。 そしてちょこんと座る。 「こ…こんにちわ…かも…隆士君…」 「う、うん、こんにちわ、棗ちゃん」 思わず声が上ずる。 「久しぶり……かも?」 「そうだね。久しぶりだね」 それを最後に会話が途切れる。棗ちゃんは下を向いていた。 そしてしばらくして、何かを決心したように、言葉を発した。 「隆士…君…女……かも?」 棗ちゃんは下から覗き込むようにして心配そうに訊いてきた。 一瞬驚いた。そうだった。最近彼女達は自分達の記憶を共有し始めているんだった。 棗ちゃんも、さっきまでの僕と梢ちゃんのやり取りを夢で記憶していたのだろう。 本当の事を言っても良かったのだけど、僕の事を心配してくれる棗ちゃんの様子は とても可愛らしくて、僕はついからかいたくなってしまった。 「そうなんだ……僕、実は……女なんだ……。 僕って女顔っぽいだろ?…本当は女で、ちょっと男の子っぽいってだけなのに… 小さいころから直らないこの、僕、って口癖のせいで良く間違われて…」 僕は袖で涙を拭う真似をしてみせ、棗ちゃんの顔色を伺った。 きっと慌てるだろうと踏んでいたのに、意外にも棗ちゃんは冷静だった。 静かに目を伏せると、微笑む。 「…そう……でも………私…は……女の子…でも…いい…かも…。 私は…有りのままの…隆氏君が…好き…だから…」 少しだけ頬を赤らめ、いつものように拙い口調で言葉を走らせる。 からかうつもりが、まるでこちらが何か魔法でも掛けられてしまったようだった。 棗ちゃんから瞳をそらす事が出来なくなってしまう魔法を。 彼女の顔を見ているだけで、動悸が早まる。 僕は、 「…隆士…君?」 やっぱりこの子が、好きみたいだ。 我慢が出来ない。瞳には棗ちゃんしか映らない。 「棗ちゃん、この前のこと覚えてる?」 「…え?」 「ほら、あの時…君が僕に君を好きかどうか、訊いたとき」 棗ちゃんは恥ずかしいのか、返事をせず、頷くだけに留まる。 「あの時、もし、桃乃さんが来なかったら…僕達どうなっていたんだろうね?」 僕は、棗ちゃんににじり寄る。棗ちゃんはあの時の事を思い出して恥ずかしいのか依然俯いたままだ。 僕の接近にすら気づかない。 「棗ちゃん…僕のこと、まだ好き?」 「…うん……もちろん……かも……」 「…かも?」 「ッ…ううん!……私…隆士君の事……大好き……だよ……」 苦しそうに訴えかけるその表情が僕をどんどん酔わせていく。 「良かった…僕も、大好きだよ…」 棗ちゃんの肩を抱き、ベッドに押し倒した。 瞳には本当に棗ちゃんしか写っていなかった。 彼女は、何が起こったかわからない、といった表情で僕を見上げている。 「…りゅ、隆士…君…」 「ごめん、棗ちゃん、もう我慢できないんだ…」 棗ちゃんは頬を赤く染め、困ったような表情になった。 そして、僕の手から逃れようとするように身を揺する。 「嫌なの?」 僕が残念そうに言うと、彼女は首を振った。 「嫌じゃ…ない、嫌じゃ…ない…けど……でも…少し…怖い…かも…」 「絶対に傷つけたりしないから…棗ちゃんも僕を求めてほしい…」 気の遠くなるような程長い時間が経った後、棗ちゃんはコクリと頷いてくれた。 そして、心配そうにこう訊いてくる。 「…うん。でも…その…女の子…同士って…できる…の?」 僕は呆気に取られた。そうだった、忘れてた。 棗ちゃんはまだ勘違いしたままだった。 思わず口篭り、頭を掻く。 「え、えーと……あれは、その………嘘なんだ、ごめん」 棗ちゃんも一瞬呆けてしまったようだった。 そしてすぐに頬をぷぅっと膨らますと、ソッポを向いてしまう。 「ごめん!本当にごめん!」 僕が棗ちゃんの正面に回りこむたび、彼女は別の方向に顔を向ける。 その表情も、仕草も、普段の彼女には無いもので、何だか新鮮だった。 だけど、今はそれ所じゃない。 「ハァ…」 僕は肩を落とした。しばし沈黙が部屋を包む。 「…」 「…棗ちゃんに、会いたかったんだよ。仕方なかったんだ。」 その言葉に棗ちゃんの表情が弛緩した。 本当?とでも問いかけたそうな瞳で僕を見つめてくる。 僕はその無言の問いかけに、キスで応えた。 「んぁ……んッ……!」 重ね合わせるだけの、優しいキス。 それにも関わらず、棗ちゃんの体から激しい振動が伝わる。 しかし、一頻り暴れた後、静かになる。 感じられるのは彼女の安らかな吐息。 身を任せてくれている。 それを感じ取ると、僕はしっかりと彼女の唇を味わった。 一端顔を離すと、彼女の桜色の薄い柔らかそうな唇が、少し湿り気を帯びていた。 彼女は何も言わなかった。ただ上気した頬で僕を見つめるだけだった。 その瞳がとても扇情的で、僕の肉欲を駆り立てていく。 僕は再び彼女の濡れた唇に口付けた。 もっと、もっと汚したい。 舌先で彼女の唇を突付く。 きゅっと堅く結ばれているその筋をなぞる。 彼女も僕の意図を察したのか躊躇いがちに口を開いた。 僕は、勢い良く舌を進入させると、ひたすらに彼女の口内を犯した。 「ちゅぱ…むちゅ…ちゅっ…んちゅ……!」 粘液と粘液が絡み合う音は実に官能的だった。 自分の舌が愛しい人の中に入ってるなんて、想像するだけで射精しそうになる。 ふと、彼女の舌が自分の舌に触れてきた。 それはたどたどしくも僕の真似をするように懸命に触れてくる。 彼女も僕を求めてくれている。そう思うとますます興奮した。 僕達は舌と唾液の交換を繰り返した。 もうどちらが自分の物なのか分からなくなるくらいに。 「ちゅ、ちゅぱ……むちゅ、ちゅ……ッ、ハァ!ハァハァ!…」 永遠とも思われる時間の後、僕達は互いに口を離した。 お互いに激しく呼吸が乱れている。 息をする事さえ忘れるほど行為に没頭していたのか。 僕は激しく上下する棗ちゃんの胸に目を付けた。 すぐさまそこへと手を伸ばし、揉みしだく。 「…んっ…隆士君…!」 ビクンと彼女の体が震えた。 「ん…あん……はぁ……んあっ……!」 快感に悶える彼女の声調は、いつもとは全く違っている。 衣服の上からでは満足できなくなった僕は、彼女のセーターを手際よく脱がしブラを外した。 生まれたままの姿の棗ちゃんは、とても美しかった。 特にその染み一つ無い鮮やかな肌の色に僕は心奪われた。 棗ちゃんは自信無さげで恥ずかしそうにそんな裸体を腕で隠していた。 「棗ちゃん、綺麗な物は隠さなくて良いんだよ」 そう耳に囁くと、僕は彼女の腕を振り払った。 そして、無防備に晒された二つの果実に、激しくむしゃぶりつく。 「やぁ…ぁ…隆士……君……吸っちゃいやぁ……」 彼女は、弱弱しく抗議の声をあげた。 しかし止めてやることなど、最早自分の意思ではできない。 これ程の物を前にして、誘惑を断つことの出来る男など居ない。 涎でベトベトになった双丘から舌を走らせ、腹部の窪みまで辿り着く。 そこに付いていた黒い粕でさえ愛しく思え、舐め取り、味わう。 臍を穿たれる妙な感触に、棗ちゃんは終始恥ずかしそうに身を捩っていた。 「脱がすよ…」 返事を待たずにスカートを下ろす。彼女の下着にははっきりと染みの後がついていた。 それを僕に見られた事が恥ずかしいのか、彼女は手で顔を覆った。 僕は寧ろ、彼女がちゃんと感じてくれてたことを知り、安堵する。 一端体を戻すと、僕は指の間から覗いてくる彼女の額にキスをした。 「恥ずかしくないよ…僕もこんなになってるんだから…」 彼女の顔にキスの雨を降らせつつ、その手を取り、自分の下腹部に誘う。 そして、隆起した自分の半身をズボン越しに握らせた。 「あっ…!」 触った瞬間一度は手を離すが、僕が誘導しなくても、 彼女は躊躇いがちに、恐る恐る、それにまた触れてきた。 「これが…隆士君の…」 すり、すり、とその形を確かめるかのように、優しく撫でてくる。 自分でする時の刺激には程遠いが、快感はそれを凌駕していた。 「隆士君も……脱いで……欲しいな……私ばっかり…」 蠱惑的な眼差しで彼女はそう願い出てくる。 断るべくもなく、僕はすぐさま服を脱ぎ出す。 パンツをおろすと、勢い良く分身はそそり立った。 彼女は、服の上からとは迫力が全く違うそれに物怖じもせず、触れてきた。 「あ…棗ちゃん…いいよ、そんな事しなくても…」 「私…ばっかり…は…嫌。隆士君…にも…気持ち…良くなって…欲しい…」 大胆に言う彼女の肩は、言葉に反して震えていた。 「ありがとう…じゃあ一緒に、さわりっこしようか…」 彼女の心境を察し、僕はそう言った。 身を隠す最後の一枚を剥ぎ取ると、彼女の陰部が露になる。 十分に湿っているそこに、指を忍ばせる。 抵抗は無く、ツプリと、指はクレバスに埋没していった。 首尾よく僕は指の出し入れを開始した。 「んっ…あっ…あん……!」 誰にも触らせたことが無いであろうそこから伝わる快感に彼女は溺れていた。 それでも、溺れながらも、彼女はもがきながら僕の半身に触れてきた。 技量は拙く、ただ擦りあげるだけ。 それでも、巧拙などは関係なかった、凄まじい快感だった。 現に僕は射精を済んでの所で堪えていたのだ。 クチュクチュ、スコスコ…と無音であるはずの部屋に、淫靡な音だけが響き渡る。 やがてそこには、お互いの激しい呼吸音も混ざりあってくる。 「あん……んっ!…あっ…ぁん!…ひゃうっ!」 「はぁ…はぁ……棗ちゃん……僕、もう……」 棗ちゃんの蜜壷は指を愛液でベトベトにさせるくらいに十分に濡れそぼっていた。 「うん……隆士君……来て……」 僕は股を開かせると、自身を彼女の陰部に宛がう。 互いの性器が擦りあう、じれったい一瞬。 彼女は、僕を求めるように両手を差し出してきた。 その体を抱きしめながら、僕は自身を奥に進めてゆく。 「…ふっ!……くぅっ!」 あれ程十分に濡れていても、やはり初めてに痛みは伴うものなのか、 棗ちゃんは声にならない悲鳴を上げた。 「大丈夫?」 「……う…ん…」 しばらくして、僕の半身は全部彼女の中に納まった。 彼女の中は暖かく、気持ちよかった。 ねっとりとした膣の内壁がうねうねと自分の物を包み込んでいる。 「動くよ…」 僕はゆっくりと腰を前後に動かす。 それだけで痺れる様な快感が得られるが、 対して棗ちゃんは歯を食いしばって耐えてるようだった。 「ごめんね、棗ちゃん…。でも、すぐ良くなるよ…」 「…あっん!ぁぁっ…ぁん!…ひゃうっ!!!」 いつの間にか、最初のゆっくりとした挙動は消えうせ、僕は激しく彼女に腰をたたきつけていた。 無論、無理やりこうしてる訳ではない。 彼女が、もっと早く動いて欲しい、と求めてきたのだ。 腰を動かしてるのは僕だけではない。 彼女も尻を前後左右にうねらせて、僕のものを少しでも感じ取ろうと努力している。 その顔にはもう苦痛など蚊ほどもなく、紅潮した頬は緩みきっていた。 「あん!…隆士、ッ、君…っ!隆士君…ッ!!!」 彼女が僕の名前を呼んだ。快感の波に支配尽くされた脳にも、 彼女の声だけは透き通るように知覚してくれる。 「棗ちゃん…ッ!!棗…ちゃんっ!!」 僕の声も途切れ途切れになる。それ位疲れてるというのに腰だけはその速度を落とさない。 快感を得ようと、子種を放とうと、腰だけが別の生き物になってしまったかのように躍起になってる。 「ッ!!」 急に限界は来た。自身が一際大きく脈動し、今にも精を放とうとしている。 慌てて腰を引こうとするが、背中を抱いた棗ちゃんがそれを許してくれない。 「な、棗ちゃん!」 「…大丈夫っ…今日は大丈夫だから…中にっ…!」 大丈夫とは安全日という奴だろうか。 しかし、だからと言って中に出すのは躊躇いがあった。 もし出来てしまったら、責任を取りきれるかわからない。 「ッ!!」 再び大きな快楽の波が僕を襲った。一瞬で思考力を拭い去られる。 次の瞬間には僕はもう、中で出すことしか考えていなかった。 「あッ!!あんっ!…あはっ!」 愛しい人の囀りを聞きながら、腰を加速させる。 パン!パン!パン!と響く律動音を聞きながら僕達はお互いの名前を叫んでいた。 「隆士ッ…君!!隆士君…ッ大好き!大好きだよッ!」 「僕もッ…僕もっ、好きだよッ!!棗ちゃん!」 射精感が限界まで高まったとき、僕は腰を彼女の奥へと押し込んだ。 そして、脈動とともに大量の精を膣内へとドクドクと流しこむ。 「ああっ…!」 僕達は、お互いに身を反り返らせ、短い、歓喜の悲鳴をあげた。 行為が終わったあと、僕達は一緒に布団に包まりながら会話をした。 いちゃつき、とでもいうのだろうか。 こういうのが恋人達にとって、肉体関係よりも幸せな時間なのかもしれない。 「気持ちよかった?」 「…うん……凄く、気持ちよかった……かも……」 「かも?」 「……隆士君の……意地悪……」 彼女は微笑んだ。僕もいたずら小僧っぽく微笑んでみせる。 「こんな事になっちゃってごめんね… そりゃ僕達は恋人同士だけど…もっとこう恋人っぽいことしてから、こういうのはするべきだよね…。 …そうだ、明日デートしよう!一緒に遊びに行こう!」 「…うん…嬉しい」 彼女は本当に幸せそうに微笑む。 僕は彼女の笑顔を見ながら思う。 状況は、それ程良いとは言えないかもしれない。 自分の恋人を裏切り、その恋人の多重人格と恋に落ちた。 そして、今、その多重人格は元の人格に統合されようとしている。 悪く言えば、消えようと…している。 でも、僕はもうこの子を―棗ちゃんを好きになってしまった。愛してしまった。 だから、どんな犠牲を払ってでも彼女を守りたい…守らなくちゃいけない。 例え、元の人格を―梢ちゃんを…消してしまうようなことになったとしても。 「…大丈夫…かも?」 いつの間にか僕は拳を握り締めていた。きっと顔色も悪くみえたことだろう。 心配そうに問いかけてきた棗ちゃんの声に応じる。 「うん、大丈夫だよ…きっと大丈夫」 そう、大丈夫だ。 どんなに状況が悪くなったとしても、最低だと多くの人から罵られようとも、 棗ちゃんの笑顔が隣にありさえすれば。 僕は自然とそう思えていた。 おわり あとがき: 今日からしばらくPC使えなくなるので、後半ばーっと書いてあげちゃいました。 急造なので、誤字脱字は勘弁してください…。 エロくない、つまらない、読みにくいのも勘弁してください…。 白鳥×棗が好きな人が居たらどうぞ読んでください。 最初と全然違う終わりになってしまったのが悔い。 設定的に無理がありすぎると書いてる途中に気づいたから変えちゃったよ…。 いや、これも十分に白鳥君が別人だけどね…。