-------------------------------------- ひとりのなかの五人・五人のなかのひとり -------------------------------------- 僕、白鳥隆士が住んでいるアパート、鳴滝荘。 僕がその大家である蒼葉梢ちゃんと恋人同士になってからしばらく経ちました。 彼女の病、解離性同一性障害・・・いわゆる多重人格は回復の兆しが見え始めました。 その証拠に、彼女の中の人格、赤坂早紀ちゃん、金沢魚子ちゃん、緑川千百合ちゃん、紺野棗ちゃん。 その彼女らとの、意識の、記憶の共有は、確かなものとなっています 梢ちゃんの誕生日に出てきた、魚子ちゃん。 ち、ちょっとしたアクシデントから出てきた棗ちゃん ・・・そのどちらも、『梢』ちゃんの時の記憶を持っていた。 でも、あの二人―まだ、梢ちゃんと恋人関係になってから会っていない二人・・・ 早紀ちゃんと千百合ちゃんはこのことをどう受け止めているんだろうか・・・ 「わぁ♪白鳥さん白鳥さんっ!見てください、ゾウさんです!」 「本当だ、可愛いね。」 「はいっ♪」 あぁ・・・やっぱり可愛いなぁ・・・梢ちゃんは・・・ 今日は梢ちゃんと二人で動物園にデートに来ている。 園内の動物を見るたびに子供のようにはしゃぐ梢ちゃんを見ていると、やっぱり僕まで幸せになってくる。 本当に、あの時― 「きみが好きだ」 「どうか僕と つきあってほしい」    ―勇気を振り絞ってよかった。目の前にいる彼女の笑顔を見ると、本当にそう思う。 今日は動物園に行く前に商店街に寄ってさんざんからかわれた。 帰りはデパートで一緒に買い物をする予定だ。 「今日は楽しかったね、梢ちゃん」 「はい♪本当に・・・本当に楽しかったです♪」 相変わらず屈託の無い笑顔。この笑顔を見ていると悩みも疲れも吹き飛んでしまいそうだ。 僕が鳴滝荘に入居した次の日、いきなり鳴滝荘を出ようかと悩んでいたときも、この笑顔で決まった。 この笑顔には魔法でもかかっているのだろうか。僕はたまにそう思う。 「あ、そうだ。みんなにお土産でも買っていこうよ。 折角動物園に来たんだし、可愛いものとかもあると思うよ。」 「はいっ。そうですよね、お留守番を頼んでるんですからお礼を買わないといけませんよね。」 「じゃあ、そこのお土産屋さんに入ろうか。」 「はい♪」 そうやって入ったお土産屋さんには、動物のデザインのグッズが店内に所狭しと並んでいた。 可愛らしい熊、ライオン、ペンギンなどのぬいぐるみから 小さな動物の絵が描かれている文房具までいろいろだ。 ・・・皆はこうゆうの喜ぶだろうか・・・? 朝美ちゃん辺りはどれでも喜んでくれそうだけど、桃乃さんを始めとする皆は? 何せ彼女たちの好物はビールと甘いものぐらいしか知らない。 こういった可愛らしい小物を喜ぶのだろうか? 「・・・ねぇ、梢ちゃん」 自分で考えてもどうしようもなく、僕は僕より彼女たちを知る梢ちゃんに問いかける。 「?なんですか?白鳥さん」 「いや・・・桃乃さんたちって・・・こうゆう・・可愛い系って言うのかな?・・そうゆうの好きなの?」 「・・・?あ、そういえば・・私もあまりこうゆうところでお買い物はしないので・・・分からないです。どうしましょう?」 がくり。 どうやら彼女も知らないらしい。 確かに梢ちゃんは高校生にもかかわらずアパートの大家だ。 桃乃さんがいろいろと企画する中でも、こうゆうところにはあまり来なかったのかも知れない。 それなら桃乃さんたちのこういったものに対する好みは梢ちゃんにも把握できなくても仕方が無い。 「・・・・・・」 「・・・・・・」 沈黙。 「・・・・・・とりあえず・・・お店の外で考える?」 「そう・・・ですね。一度出ましょうか」 「うん。」 「・・・うーん・・・」 と、僕。 「ん〜〜〜・・・・・・」 と、梢ちゃん。 やっぱりデパートで甘いものでも買って帰ったほうがいいかな? 買っていかない・・・ダメだダメだ!! 桃乃さんにどやされて下手したら帰ってきてからまた行かされる事になる。 「・・・やっぱり、デパートで甘いものかって帰ろうか?」 「・・ハイ、そうですね。」 心なしかしょんぼりしたように見える。皆の欲しい物が分からなかったのが残念だったのだろうか。 この娘は、いつもいつも人のために一生懸命になれる。 それはとても素晴らしい事で、この娘の優しさが伝わってくる。 だから、僕は、この娘と・・・ 「・・・さ・・・しら・・・ん・・・」 梢ちゃん・・・ 「白鳥さん!」 「うぇあっ!!」 すっとんきょうな声を上げる僕。 「どうしたんですか?急にボーっとして」 「い、いや。なんでもないよ。そ、それじゃ行こうか?」 話をごまかすために出発を促す。 まさか、『君のことを考えていた』なんて意識しては言えない。言える訳が無い。 「はい、行きましょう。」 二人で立ち上がり、梢ちゃんが僕の前に立った。・・・その時だった。 風。強い風が急に吹き付けた。僕も思わず身を縮こまらせる。・・・?・・・!!! 僕は見た。見てしまった。梢ちゃんのミニスカートが風に翻るその光景を。 満足したのか。風はぴたりとおさまり、その場から姿を消した。 「・・・・・」 僕は、身動きもとれず、顔を真っ赤にしたまま梢ちゃんを見続けている。 「あ、あの・・・」 「こ、こずえちゃ・・・」 「み、見ま、し、しらと、白鳥、さんっ、見ました、か、わ、わたわた、わたし、の・・・」 梢ちゃんも顔をポストよりもトマトよりもイチゴよりもリンゴよりも、 彼女の大好物の梅干しよりも真っ赤にしている。 「え、えと、その、みて、ない・・・と言えば、嘘に、なる、というか、けど、見てな、いことも、ない、んだけど・・・」 まだ僕もこういったトラブルには対応できない。当たり前だけど。 「  」 途端、まるで『ぼんっ!』とでも音がしそうなくらいに梢ちゃんの顔から蒸気が出てきて、前のめりに倒れこむ。 「うわとっと!!」 咄嗟の判断で梢ちゃんを抱きとめる。でも、その瞬間僕が感じ取ったもの。それは・・・ 「!(デジャヴ!?)」 ・・・前も、そのまた前も、このパターンで事態が好転した試しは皆無だ。とにかく自分から梢ちゃんを離す。 勿論手を離すと倒れてしまうのでしっかりと肩をおさえている。 「・・・う・・・ん・・・」 梢ちゃんが意識を取り戻したみたいだ。だけど、完全に目を醒ましたとき、彼女は蒼葉梢ちゃんではない。 サキチャン? ナナコチャン? チユリチャン? ナツメチャン? 頭の中でぐるぐると回る残りの四人の人格。 「・・・ぁ・・・う・・・ん・・・!」 覚醒、したみたいだ。目をぱっちり開く彼女。瞳の色は―紅(あか)・・・。 「さ、早紀ちゃん?・・・ひ、久しぶ・・」 「見たな?」 顔を真っ赤にして聞く早紀ちゃん。 「え?」 「見たな?」 「え?」 「見たな?」 「いや」 「見たな?」 「その」 「見たな?」 「なんというか」 「見たな?」 「ちが・・」 「見てないのか!?」 「え、いや、それは・・・」 「見たんだな?」 「見たというか」 「見たんだろ?」 「見えたと言ったほうが」 「見・た・ん・だ・な?」 「ご、ゴメンナサイ・・・」 「〜〜〜/// やっぱり見てんじゃねえかーーー!!!(殴)」 「いだぁいぃ!!」 あ・・・悪魔が・・・降りてきた・・・僕を迎えに来た天使と一緒に・・・ 「あ・・・わ、悪い・・・」 !!? 謝罪!?早紀ちゃんが。あの早紀ちゃんが。僕に? 入居したその日、早紀ちゃんに殴られた。 デパートで茶碗を買った日、早紀ちゃんに殴られた。 謝罪は、無かった。 今は?吹き飛んだ僕に慌てた様子で駆け寄ってきてくれている。 倒れている僕を起こしてくれている。 僕についた泥を、落としてくれている。 なぜ?何故?Why? 「だ、大丈夫か・・?」 「え!?あ、う、うん!大丈夫!平気平気。」 「そ、そうか・・・良かった・・・」 深く息をつく早紀ちゃん。本気で心配してくれていたようだ。 殴ったのは彼女だけれど。 「ありがとう。」 「ん?」 「心配してくれてるんだよね?」 「(かーっ)ば、馬鹿!だだ、誰が・・心配なん・・か・・・」 顔を真っ赤にして否定する早紀ちゃん。そんなこと言っても今のは心配してくれていたと見て間違いないだろう。 でも言うとまた殴られるので心の中にそっとしまいこむ。あ、今少し利口になった気がする。僕。 「そ、そうだね。ゴメンゴメン。」 「え、あ、いや、お前が・・謝らなくていいんだよ・・悪いのは・・あたし・・だし・・ごにょごにょ・・」 ?早紀ちゃん・・いつもと何か違う? 「早紀ちゃん」 「ん?な、何だよ?」 「どこか具合でも悪い?」 「?何でだよ?別に普通だろ。そ、それとも・・・」 あれ?早紀ちゃんなにもじもじしてるんだろう? 「ど、どこか・・・変に見えたり・・する・・のか・・?」 !!!う、ぅぁ・・・こ、この表情は・・クるなぁ〜・・・! この表情に耐えられる男がこの世にいるんだろうか?いや、いないだろう。僕はそう思った。 この世の中にこんな可愛い娘が顔を赤らめて上目遣いで見てくるのに耐えられるだろう。 思わず僕も顔を真っ赤にする。 「ど、どうしたんだよ。顔、真っ赤だぞ?」 「え!?い、いやいや、なんでもないよ。大丈夫大丈夫。」 「そか?な、ならいいんだ。うん。」 顔の火照りが無くなったのを確認してからふと考える。 「ねえ」 「ん?」 「もう一度お土産やさん覗いて見ようよ。」 「へ?」 「早紀ちゃん、何か欲しいもの無い?気に入ったのがあれば買うよ。」 「え、いや、いいって。それにほら、あたしは・・こーゆーの・・・似合わない・・だろ?」 少し俯く早紀ちゃん。こんな早紀ちゃんを見るのは初めてだ。 「そんな事無いよ!きっと早紀ちゃんが気に入るのがあるって。」 「でも・・・やっぱ、いい。桃たちに甘いもんでも買って帰ろうぜ」 早紀ちゃんも中々頑固だ。こうなったら殴られるの覚悟で・・・ 「いいからっ、行こう!」 「う、わわわっ!は、離せっ、はなせー!」 手を握りお土産屋さんに再度入店。 「ええと・・・これ・・じゃないかな・・これ・・も違うよね」 「・・・」 早紀ちゃんを無理に店の中に入れてしまった。後は買うものを選ぶだけ。 でも一発や十発ぐらい殴られる覚悟だったけど、思いのほか拳は飛んでこない。 やっぱり今日の早紀ちゃんは様子がおかしい。顔もすぐ赤くなるし、元気もあんまり無い。 あれ?早紀ちゃん何処見てるんだろ?・・!ええと・・ここらへん・・これかなぁ? 「早紀ちゃん早紀ちゃん」 「何だ?」 「これどう思う?」 そういいて僕が見せたのは、ライオンのぬいぐるみ。 しかも下半身(?)にジーパンを履かせた『半裸イオン』。 「どう思うって?」 「可愛いと思う?」 「ん。いや、ま、可愛い・・・んじゃねえか?うん」 「そう?じゃ、ちょっと待っててね」 「あ、ちょ・・・」 何か言いたげだった早紀ちゃんを置いてレジに。 あ、いつものお姉さん。 「ヨ〜?ヨヨ、あなたはいつぞやの不良債権を買ってくれたお方だヨ〜?」 「こ、こんにちわ・・・」 「ヨ?後ろのポニーテールの娘は彼女かヨ〜?」 「うぇ!?あ、は、はい・・・僕の・・彼女、です・・・」 「オ〜!女々しい面してなかなかやるヨ〜!で、何買うヨ〜?」 「えと・・これです・・」 半裸イオンをレジに出す。 「ヨヨヨ!?こ、これは!?」 「え?え?ど、どうかしたんですか?」 「いやいや。またもやこれは私が入荷したものヨ〜。お客さんとはなかなか感性があうヨ〜」 これもアナタか! ま・・まぁ・・ぬいぐるみも買えたことだし、早紀ちゃんのトコに行かなくちゃ。 「お待たせ、早紀ちゃん」 「遅いっ!」 「あ、ゴメン。ちょっと迷っちゃって・・・」 「ったく、急に引っ張り込んで何買ってたん・・・」 「ハイ。」 「え?」 「これ。早紀ちゃんにプレゼント。はいっ」 「あ、あたたあたあた、あたし・・に・・?」 「うん。それとも・・こう言うぬいぐるみ・・嫌いだった?」 「い、いや・・嫌いじゃ・・ないけど・・・あたしにはやっぱ・・・似合わないんじゃないか?」 「そんな事無いよ。だって早紀ちゃん店に入ってからちらちらこのぬいぐるみ見てたと思うけど・・・違ったかな?」 「!!き、気づいてたのか・・?」 「あ、これで合ってた?よかったぁ。じゃ、改めて、ハイ、プレゼント!」 「う・・・ま、まぁ・・・くれるって言ってるのを貰わねぇってのも野暮だしな・・ま、ありがとな・・・」 「どういたしまして♪」 「・・・・・//」 「じゃ、そろそろ帰る?」 「あ・・ちょっとトイレ行ってくるわ!」 「あ、目の前にあるよ」 「!い、いや、前に入ったところが気に入ったから・・そっち行ってくる!」 そういって走り去る早紀ちゃん。何故? はっ!ま、まさかぬいぐるみを葬るため!? まさかとは思うけど・・・一応あとを少し尾けてみよう・・・ あ、いた・・・ よかった。喜んでくれてるみたいだ。嬉しそうにぬいぐるみを抱きしめてる。 嬉しいならその場で喜んでくれてもいいのに・・・ 元の場所で待っておこう。 帰り際にデパートでお土産に甘いものを買い込んだ僕たちは鳴滝荘に帰ってきた。 でもやっぱり早紀ちゃんはさっきから突然顔を赤くする。何で? 風邪かな?今日はゆっくり休んだほうがいいんじゃないかな・・・ 「ただいまー」 「アラ、白鳥クン。おかえり」 「梢ちゃんもお帰りです〜♪っておや〜?その髪型・・・早紀ちゃんですか〜?」 「おう!早紀ちゃんだぜ!」 「あ、あのっ二人とも、今日は早紀ちゃん調子が悪・・・」 「よーし!それじゃ今日は早紀ちゃんが久しぶりに出た記念で白鳥クンの部屋で宴会だわよ〜〜!!」 「「応〜〜!!」」 元気に返事をする珠実ちゃんと早紀ちゃん・・・って 「ええ!?」 「ん?どしたの白鳥クン?」 「だ、だって早紀ちゃん・・体調悪いんじゃ・・」 「はぁ?何言ってんだ白鳥!見ての通り元気だっての!」 「だ、だって・・さっきからよく顔赤くなるし・・・風邪かと思って・・・」 「っ・・//そ、それは・・・・///」 「あ、ほら、今も!熱あるんじゃない!?」 ぴとり。早紀ちゃんのおでこに自分のおでこを当てる。 「〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」 早紀ちゃん?ものすごく慌て・・・て・・・ しまっっっっっっったぁぁぁぁぁぁぁ!!! ままま、また僕は無意識にとんでも行動をーーー!!! 意識を戻すとまだ僕のおでこと早紀ちゃんのおでこがくっついて、お互いの顔が調子近距離にあることに気づく。 あ・・だの、う・・だの、声にならない声をあげれば早紀ちゃんの吐く息と絡み合う。 早紀ちゃんの顔を見ると茹だったタコみたいに真っ赤だ。瞳の色と同じ、真っ赤。 きっと僕も同じぐらい真っ赤だろうなぁ・・・ そういえば漢字で「蛸」(タコ)って梢ちゃんの「梢」に似てるなぁ・・ハハハ・・・ じゃなくて!! 「お・・・お・ま・え・は〜〜〜〜〜」 「っはぅあっ!?」 「い、いっっっっつ・までぇ・・・・」 「わわ、いやそのこれはあのちがうといいますかいやはやなんともえっと・・・・」 「あらら〜です〜?」 「白鳥クンってば意外と大胆ね〜♪さっすが彼氏!住人とは違うのだよ、住人とは!!」 「本当は30%しか違いが無いのにらぶらぶ過ぎて周りからは3倍のらぶらぶっぷりに見えるんですか〜?」 「流石はお珠どん!わかっとるの〜!!」 「いえいえ〜」 「そ、そんな濃ゆい会話してないで助けてくださ――」 「この変態がーーーーーー!!!」 「あぶはぁーーーーーー!!!」 ―――当たらなければどうと言うことは無い――― そういったのは誰だったかなぁ・・・ でも、そんなに簡単にかわせたら苦労しないのに・・・ 「あ・・・し、白鳥!だ、大じょう・・・」 「よっしゃ早紀ちゃん珠ちゃん!行くわよーーー!!宴会宴会〜!」 「お〜いえ〜」 「あ・・・お、おう!!今行く!」 「白鳥クーン!先に行っとくわよ〜!」 こ、梢ちゃん・・・かむばっく・・・がくっ 「あれ?お兄ちゃんだ。お帰りなさい!何でこんなところにいるの?」 声が聞こえる。朝美ちゃんの声だ。 「お兄ちゃん?どうしたの?大丈夫?」 「寝てるんじゃないかしら・・・?」 「そっか!じゃあねお兄ちゃん!風邪ひかないでね!」 沙代子さんじゃないんだからこんなところでは寝ないよ、朝美ちゃん・・・ しばらくして意識を取り戻した僕は、悲鳴をあげる体を引き摺って自分の部屋まで行く。 本来自分の部屋は唯一くつろげる安らぎの場所と思う人が多いだろう。 だけどここ鳴滝荘の僕の部屋は、桃乃さん主催の宴会の最前線であり、なぜか皆が集まる場所になっている。 時々思うのだけど、なんで炊事場でやらないんだろう?聞いてもたぶん答えは得られないので黙っているけど。 部屋の前まで来た。中から大きな笑い声が聞こえる。早紀ちゃんと桃乃さんの声だ。 なんとかドアを開ける。 「いや〜動物園で急に引っ張り出されてびっくりしちまったよ!」 「あらら〜それは大変だわね〜」 「ですね〜」 「全くだよ!あははは!!」 「あ〜ら白鳥クン遅〜〜い!!」 「はぁ・・す、すいません・・」 「何やってたんだよ白鳥!ほらはやくこっち来いよ!」 「あ、うん・・」 大分出来上がってるな、早紀ちゃん・・・ 「それにしても久しぶりですね〜早紀ちゃん〜♪」 「おーよ!最後にあったのはえっと・・・」 「・・・僕とデパートに行ったとき?」 「あー、そうそう!そん時だな!」 「もう大分経つわね〜!」 「そーだなー・・・何ヶ月だ?白鳥が入ってきたのが4月ごろで・・今が冬だから・・」 「もうすぐ一年ですか〜?」 「かー!そんなになるか!どうだ?元気してたのか?」 「はい〜」 「バリバリ元気だわよ〜!」 「朝美ちゃんと沙代子さんと灰原さんも元気だよ」 「そーかそーか!元気か!そいつぁ良かった!あっははは!!」 「(ぴーん!)桃さん桃さん〜」 「ん〜?どしたの珠ちゃん?」 「実はごにょごにょほにゃらかこまんたれぶ〜のもょもとで〜」 「ほっほ〜う。そりゃ名案じゃのぅ〜よきにはからえ珠実くん」 「いえっさ〜」 「お?何処いくんだ珠実?」 「いえいえ〜少し部屋に戻るだけです〜すぐに戻ってくるです〜う〜ふふ〜」 「そうか?すぐ来いよ!」 「お〜いえ〜」 そういって部屋を後にする珠実ちゃん。何の用だろ・・? 「ん?おい白鳥!」 「えっ!何?」 「全然飲んでねーだろ?もっと飲め飲め!!」 「うわとと、そ、そんなに飲めないって・・・」 「いーからさっさと飲みやがれ!」 「わ、分かったよ〜・・・」 いつもの早紀ちゃんだ。今まで数えるほどしかあってないけど。 その時と同じ早紀ちゃんだ。 「(ごくごく・・・)う、ぷはっ・・く、苦しい・・・」 「何だ〜?その程度でもうダメか?軟弱だなお前は!」 「そんなこといっても・・まだ未成年だし・・それに早紀ちゃんだって梅酒しか・・・」 「んだとー!?」 「わー!ゴメンナサイ〜!」 「おまたせです〜♪」 と、その時だった。珠実ちゃんが戻ってきたのは。 手に、何かを持って・・・・・ 「お〜珠実!おっせーぞ!」 「どうもすいませ〜ん♪」 「あれ?珠実ちゃん何持ってるの?」 「これですか〜?う〜ふふふ〜早紀ちゃんにプレゼントです〜♪」 「アタシに〜?」 「はい〜v」 「何だ?」 「う〜ふふ〜のふ〜vこ・れ・で・す〜」 そう言って珠実ちゃんが取り出したもの、それは・・・・ 「ぴ・・・・ぴぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!」 「ちょっ・・蝶!?」 「お〜いえ〜!」 「おや?早紀ちゃんどうしたの〜?」 「ぴ・・ぴ・・ぴ・・・」 ぱたた・・蝶が早紀ちゃんの方に飛んでいく 「ぴえ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」 悲鳴を上げて部屋中を走り回る早紀ちゃん。やっぱり蝶が怖いんだなぁ・・・ 「おやおや〜?可愛い蝶々さんなのになんで逃げるですか〜?」 わ・・わざとだ・・・!絶対わざとだ・・・ 「ぴ・・・・・ぴ・・」 ぱたた・・・ 「ぴえ〜〜〜!!!」 ぱたた・・・ 「ぴえ〜〜〜!!!」 「さっ、早紀ちゃん!落ち着いて・・」 「ぴえ〜〜〜!!!」 ダメだ。何がなんだか分かっていない。 「ぴ・・ぴえ〜〜〜〜〜!!!」 「早紀ちゃん、落ち着い・・・」 「ぴぇ〜!やだぁ〜〜〜!!!(がしっ!)」 「うわぁ!!」 さ、早紀ちゃん!? 「「おお〜〜!」」 「ささ、早紀ちゃんっ!!だだだだ、抱きつかないでぇっ!!」 う、腕に、柔らかいものがァアアア!?!??!?! 「やだやだやだ〜〜!!蝶々怖い〜〜!!こっちこないでぇ〜〜〜!!」 「お゛ぢづい゛で〜〜!!苦しい〜!!」 こ、これは・・魚子ちゃん以上の天国地獄攻撃〜〜!!? 「う〜ふふ〜♪」 「ふふふ・・見たか白鳥クン!危機て・・・」 「危機的状況に陥らせる事によりドキドキ度を上げ〜」 「・・・さらに・・・」 「さらに蝶が怖い早紀ちゃんに蝶をけしかけて混乱させ、白鳥さんとまるで誰かに仕組まれたかのように密着〜♪ これによってお互いの体は触れ合い、一気に親密に〜♪」 「・・・(ぐすっ)こ、これぞ・・・」 「これぞ名づけて『第二次王道落愛作戦』(オペレーション・フォーリンラブ・ザ・ネクスト)〜♪」 「〜〜〜!!(ぽかぽか)」 「さてさて、説明しているうちにどうなったですか〜?」 「〜〜〜〜〜〜!!!!(ぽかぽかぽかぽか)」 「や、やめて早紀ちゃん!落ち着いてってば!」 「いやだ〜こっちにくるなぁ〜〜!!!(ぎゅ〜〜)」 「げふっ・・や・・やめ・・くるし・・・」 「さてさて〜そろそろ白鳥さんが墜ちそうなので止めておきますか〜」 「・・・勝手にして。ぐすん・・・」 ぱたた・・・ 「早紀ちゃ〜ん?蝶、行きましたよ〜?」 「ぴ・・・ぴぇ・・・?」 「は、離して・・苦し・・・限界・・・」 「はっ!し、白鳥!!?な、なんで・・・」 「なんでって・・早紀ちゃんが白鳥クンに抱きついたんだわよ〜?」 「あ、あた、あたあたあたっあたしが!?」 「はい〜v胸なんか押し付けて力いっぱい抱きしめてました〜♪」 「ぇ・・ぁ・・ぅ・・ぃ・・」 よく分からない声を出してカクカクと体を揺らしている。 でも問題はそこではない。問題は・・・ 「あの、さ。早紀ちゃん・・・」 「・・・ぁぅ・・・ぇえ?」 「も、もし・・・よけ、れば・・離して・・欲しい・・かなぁ〜って・・・」 「!!!」 「早紀ちゃんだいた〜んv白鳥クンとそんなにくっ付いちゃって〜?」 「さすが、ですね〜♪」 「ち、ちちちちちっ違・・・!」 「とりあえず何か言う前に白鳥クン離してあげたら〜?もう死にそうだわよ?」 「うわわ!わ、悪い・・・///」 「こ、こっちこそ・・・///」 う゛、気まずい空気・・・ 「いやはや〜v」 「初初しいのぉ〜♪お姉さんドッキドキだわよ〜」 「&4%?”?”&&iDJiuhgdygw$"'$"&!!!」 良く分からないよ、早紀ちゃん・・・ 「〜〜!〜〜!!!〜〜!!〜!〜!!!〜!・・・・あ、そ、そーいや・・・」 「?」 「なんで桃も珠も・・その・・あたしが・・蝶が嫌いって分かったんだ・・・?」 あ、そういえばそうだ。早紀ちゃんが蝶嫌いって分かったのはデパートのときだし その時の早紀ちゃんの様子からこの二人にはバレてないみたいだし・・・ 「う゛。そ、そりは・・・ねぇ〜?」 「はい〜。実はですね〜♪」 「実は・・?何だよ?」 「実は以前早紀ちゃんが出た後に白鳥さんが皆に言いふらしてましたよ〜?」 「んなぁ!?」 「白鳥さんってば楽しそうに『早紀ちゃんは蝶が怖いんだって〜笑っちゃうよね〜』って言ってました〜」 「ちょちょちょちょちょっと珠実ちゃん!!デタラメ言わな・・・」 「し〜〜ら〜〜と〜〜り〜〜」 「はぅぁぅあ!?!?」 「お前・・・あれほど言うなって・・言ったのに・・・言ったのに・・・」 「だ、だから違うって・・・」 あれ?早紀ちゃん、泣いて・・・ 「もう・・・馬鹿ァーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」 「あぶへはぁっ!!」 今日・・・何度目・・・? 「あ・・・し、しらと・・・」 「よーくやった早紀ちゃーーん!!」 「ないすぱんちです〜♪」 「え・・あ・・お、おーよ!ざまーみろってんだ!!」 パトラッ。シ。・・・僕もう・・・疲れた・・・ 声が聞こえる・・・ 『じゃ・・白・・は・・・たしが・・つ・・て・・部屋・・』 『そ・・?じゃ・・しく・・』 『おや・・〜い・・』 『ああ・・・な・・』 も・・ダメ・・続く・・がくり。 ・・・・・へんじがない。ただのしかばねの・・・ 「って違う!!」 「うわ!?」 「あ・・れ・・?早紀ちゃん・・?」 「あ、ああ・・・目が覚めたか?」 「え・・・?寝てたの、僕?」 「寝てた・・・というか・・気絶してたと言うか・・・」 「?」 「でも・・・その・・ゴメンな・・」 「え?」 「今日は・・ずっと・・さ、迷惑かけっぱなしで・・・悪かった・・・」 「そんな・・謝って貰わなくてもいいってば」 「いや・・でもアタシはお前が・・・」 「僕が?」 「あ!いやその・・なんだ・・ごにょごにょ・・・」 「大丈夫だって。もう早紀ちゃんとも随分親しくなったじゃない。」 「白鳥・・・」 「それに、もう慣れたよ。振り回されるのは性分だし、今までもこんなことはあったから。 早紀ちゃんも他の娘たちと同じ梢ちゃんなんだからさ。だから僕はそんな早紀ちゃんや皆が好きなんだ。」 「!!!(ぼっ)///////」 「あっ!いやその・・・好きってのは・・・好きだけど・・えっと・・その・・・」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ またもや気まずい沈黙。 だけどそれは急に破られる。 「・・・う・・ぐすっ・・」 「・・え?」 「ぐす・・ひく・・・・うう・・・」 「さ、早紀ちゃん!?」 「ご・・ゴメン、な・・・あたし・・ぐす・・・ぴぇ・・・」 「どどど、どうしたの!?なんで泣くの!?」 「だって・・・ぐすっ・・あたし・・白鳥・・の・・ために・・ひっく・・・」 「僕のため?」 「うん・・白鳥の・・・恋人・・になったから・・・ぐすっ・・相応しい女に・・・ひく・・なるように・・って思ったんだ・・・」 「早紀ちゃん・・・」 「だけど・・やっぱり・・あたしには・・ぐす・・無理・・だったみたいで・・情けなくて・・ぐす・・・」 早紀ちゃんが泣いてる。僕のために?なら僕が何とかしなくちゃ。どうする?僕に今出来ること――                       「ぐす・・・!ぇ・・?」 力一杯抱きしめる。今はこれぐらいしか出来ないから・・・ 「ごめんね・・・僕、早紀ちゃんが僕のために頑張ってくれてるって気づいてあげられなくて・・ごめん・・」 「しら・・とり・・・」 「でもなんで?今の早紀ちゃんで充分なんだよ?なんで無理に変わろうなんて思ったの?」 「だっ・・て・・うっ・・白鳥の・・ほんとの・・ぐすっ・・恋人・・は・・あたしじゃ・・ない・・から・・・ぐすっ ほんとの恋人のことが好きなら・・・う・・同じ・・ように・・ぐす・・すれば・・って・・・」 ――――――梢ちゃん。僕が恋した、僕の恋人。 確かに最初に僕が恋という感情を抱いたのは彼女―五人の人格の主人格。 だけど・・・早紀ちゃんを初めとする皆。魚子ちゃんや千百合ちゃん、そして棗ちゃん。 今僕は、彼女たちも梢ちゃんと同じように愛し始めている。愛おしく思っている。守りたいと思っている。 「ひく・・うぇ・・ぐす・・白鳥・・・」 「何?」 「白鳥は・・あたしみたいな女の子・・嫌い・・・だよな・・・?」 ――そうだった。―― この娘は、とても優しい娘だったんだ。 いつも乱暴なしぐさと言葉に隠れて見失いがちだけど、彼女は人一倍人を思いやる気持ちを、大事にする気持ちを知っている。 それは恋人である僕なら知っているはずだ。 どんなに深いところに隠れていても、その優しさという光は消えない。 僕はどんなときでもその光を見ていなければならない。僕がその光を見失うわけにはいかないんだ。 それなのに僕は初めて出合ったときの印象をまだ早紀ちゃんに持っていた。乱暴者のイメージを。 でも本当の彼女は、本当の早紀ちゃんは、とても優しい娘なんだ。僕はそんな早紀ちゃんを、梢ちゃんを愛している。 この想いに―偽りなんか無い。僕は、早紀ちゃんが・・・ 「好きだよ・・・」 「ぐす・・ぇ・・?」 「僕は、ありのままの早紀ちゃんが好きだから・・・僕のために・・無理なんかしなくてもいいんだよ・・ ありのままな早紀ちゃん・・誰よりも優しくて、僕のことを想ってくれる早紀ちゃんを、僕は好きで好きでしょうがなく思うんだ・・」 「白鳥・・・」 「だから・・ね、笑って!早紀ちゃんは皆を照らす太陽なんだ。だからいつも輝いていて欲しいんだ。だから、笑って。」 「・・・ん・・・そう・・だよな。あたしが泣いてちゃ・・・しょーがないよな!」 「うん!」 「っと・・その前に・・・な。あのさ・・・」 「何?」 「えっと・・・その・・いつまで抱きしめてんだよ・・・///」 「・・・え?・・・わ!わわわっ!!あ、その!えっとっ、ゴメン!」 「・・・バーカ謝ってんじゃねーよ!あたしは・・お前の・・・その・・恋人・・だろ?」 「早紀ちゃん・・・」 「へへっ//」 「早紀ちゃん・・その・・あの・・今、すっごく可愛い・・・///」 「なっ・・・こ、この馬鹿っ!面と向かって恥ずかしーことゆーな!!(ゴン!)」 「痛っ!えへへ・・ゴメン」 「ったく・・・///」 それから、何分か経った。二人で黙って背中合わせに座っている。 そうしてなんとなくボーっとしていると。先に口を開いたのは、また早紀ちゃんだった。 「白鳥・・・あの・・・ひとつ・・頼みたいことがあるんだ・・・恋人として、さ。」 「?何?僕に出来ることならなんでも。」 「あー、うん。えと・・・・アレだ。そのー・・ごにょごにょ・・・」 「?」 「・・・ス・・・(超小声)」 「え?ゴメン、聞こえないよ。もう一回言ってくれる?」 「〜〜///・・・・・キ・・・・たい・・・・」 「え?だから聞こえないよ。もう少し大きな声で言ってってば。」 「///あ〜〜〜も〜〜〜!!///キスしたい!恋人同士で!白鳥があたしの事好きなら!キスしてみたい!」 「え゛!?き、キキキキキキキキキキキキキキキキキキキ、キスデスカサキサンッ!?」 「そうだよ!女の口から・・こーゆーの何度も言わせるなっ///」 「あ、ゴ、ゴ、ゴ、ゴ、ゴ、ゴメンナサイ」 「で・・どっちだ?嫌か?いいのか?」 「ぼ、僕は・・・いいと、思います!」 「っ///////」 「〜〜〜〜」 ダメだ。これ以上声が出ない。話し合うことが出来ない。態度でしか表せない。 だったら・・・拒むことなんて出来ない。こうなったら行くところまで行ってしまえ。 行くところまでと言っても勿論キスまでだけど・・・タブン。  ギ ギ ギ ギ ギ ギ ギ ギ ギ  お互いにゆっくり、ゆっくりと振り向く。  ギ ギ ギ ギ ギ ギシッ 向かい合う形になる。数分ぶりに見た早紀ちゃんの顔は今日一番の赤さだ。 「えっと・・その・・よ、よろしくおねがいします・・・」 「ばっばか・・・///変な言い方するな・・・キスするだけだろうが・・・」 「するだけ・・って考えられるのなら・・・僕たちこんなにカチコチにはならないと・・思うけど・・・」 「っ!そ、それは・・・その・・やっぱり初めてなわけだし・・・」 「そ、それなら僕だって・・」 あ〜・・・ダメ。ゼッタイ。意識しまくってどうしようもない。動けない・・・ 「・・・白鳥ぃ・・・」         っ 頬を赤く染めた早紀ちゃんにか細い声で名前を呼ばれたりなんかしたらもうアウトだ。どうにでもなってしまえ。 「早紀ちゃん・・・」 顔を近づけていく。思いのほか緩やかに動く。 どんどん早紀ちゃんの顔に近づく。早紀ちゃんは目を閉じ、僕に体を預けている。20cm。15。10。5。4。3。2。1cm―――― 「さ〜きちゃ〜〜〜〜ん!!!白鳥クン起きたぁ〜〜〜???」                                   「って・・・うおぅ!?」 「あ、あたし・・・ま、ま〜〜た・・お邪魔しちゃったか・・ニャー・・・な〜んて・・・ニャハハ・・お、お邪魔しました〜〜v」 ばたむ。閉じられるドア。 「さ、早紀ちゃん・・・」 「・・・・・」 「えっと・・・大丈夫?」 「・・・・・」 「もしもーし?早紀ちゃーん?」 「ぴぇ〜・・」 「うわわ!早紀ちゃんっ!?」 倒れこみそうになる早紀ちゃんを間一髪で支える。 「だだ、大丈夫!?」 「は、ははは・・だ、大丈夫ぅ・・・へへ・・・」 「えっと・・今夜は・・もう寝ようか?」 「そ、そうだ・・・な・・・」 「う、うん・・・」 部屋の入り口で早紀ちゃんと向き合う。 「えーと・・お、おやすみ。早紀ちゃん。」 「あ、ああ・・・・・・よし!」 「え?な、何?」 「すぅーーっ・・(←深呼吸)えいっ」 一瞬。ほんの一瞬だけど。触れた唇。初めての感触。女の子だ。女の子の唇が僕の唇と重なった。 あまりの不意打ちにボーっとしていると 「へへ・・///じゃ、じゃーなっ!おやすみ!!」 「お、おやすみ・・・」 やっとのことで口から搾り出した『おやすみ』。 でも、もっと伝えなきゃいけない。僕の意思で、彼女に。 「早紀ちゃんっ」 「ん?」 好きだよ、早紀ちゃん。大好きだよ。 ・・・ばか。・・・あたしもだよ。白鳥。好き、大好きだ。 やっと言った言葉。伝えた想い。彼女に。彼女たちに。伝わったかな、この想い。 僕は、蒼葉梢ちゃんが好きだ。 でも、それと同じぐらいに彼女たちも、早紀ちゃんも愛している。 そんなこと早紀ちゃんに言ったら、優柔不断―とか言って殴られるかな? それでも僕は、彼女たちを愛する。愛していく。 この気持ちを、彼女ひとりの中の、五人に伝えたい。 伝えよう、梢ちゃんに、魚子ちゃんに、千百合ちゃんに、棗ちゃんに。 ―――早紀ちゃんに―――いつか、きっと――― あとがき無間地獄 やっと終わったぁ〜〜・・・ぽっくり。 ってまだ死にたくない! とりあえず終わらせることが出来た自分に乾杯。毎晩襲う眠気に完敗。 早紀ちゃんはいいよね〜とひたすら思っていたらこんなことしでかしてしまいました。 むわむわしてやった。今は反省している。でも満足している。 これにこりてこれからも暇を見つけたら書こうと思う。 でもいちどかくとひまがみつからなくなるほどかきだすのでしばらくないよ。 近いうちにSSの中に入れたかったけど入れられなかった所とかを投下する・・・かも。 乞うご期待!・・・して貰っても困るが! それでは、こんな青二才の趣味丸出しSSにお付き合いいただきましてありがとう御座いました。 白鳥くんor早紀ちゃんはこんなんじゃないやい!って方はお申し立てくださいな。