目が覚めてまず見えたのは黒い髪だった。
視線を少し下のほうに移し大切な人が静かに寝息を立てているのを確認して、ホッとする。
あどけない寝顔を眺めていると自然と顔が綻んでくる。
起きないようにゆっくりと抱き寄せ髪を撫でると、
甘える様に顔をこちらの胸元に摺り寄せてくる。
思わず強く抱きしめたくなるが思いとどまり起きるまでそっと髪を優しく撫で続ける。
最近の毎朝の日課だが、不思議と飽きる事がない。
ずっとこうしていたいような、早く起きて欲しいような、不思議で幸せな気持ちになる。
そうこう考えているうちに腕の中の体がモゾモゾと動き出す、どうやら目が覚めたらしい。
そっと軽く抱いている手を解くと、起き上がり、
しばらく夢うつつで周りを見回していたが、私を見ると笑顔になり口を開く
「ジェンドおはよー」
「おはよう十六夜」
突然、十六夜の顔がこちらに近づき唇を軽くついばみすぐ離れる。
「えへへ、おはようのチュー」
突然の事で少々面食うが、やられっぱなしというのは性に合わない
十六夜を抱き寄せ、顔を近づける。
「じゃあ、私もお返しだ」
「ふにょ?」
返事を待たずに十六夜の唇を閉ざし、先ほどより少々深く長いキスをする。
「ん・・・」
十六夜とのキスに夢中になっていて、ノックの音にまったく気がつかなかった
突然ドアが開かれ、金髪の男が顔を出す。
「ジェンド朝だ・・・え?」
素早く十六夜から体を離すと、ドアを開けたままの姿勢で凍り付いているカイに
ベットの枕元に立てかけてある剣を一動作で鞘から抜き払い、投げつける。
「あ、カイおはよー」
剣か十六夜の声かどちらで正気に戻ったのか、カイは何とか半歩だけ体をずらす
その一瞬後ギャリと鋭い音を出し、カイが半歩前に居た場所の後ろの壁に剣が突き刺さる。
「ジェンド!?いま本気で狙っただろ!」
「うるさい!!避けるな!」
「ふにょ?新しい遊び?」
今日の幸せな朝はこうして過ぎていく。