「朝だよー」
朝、ベッドの上で十六夜がジェンドの肩を持ち、体を揺すっている。
揺すられながらジェンドはまだ半分以上寝ている頭でなんとか薄目を開け、
十六夜を確認すると口を開く。
「・・・十六夜・・・いつもの・・・」
小さくそれだけ言うとジェンドは再び目を閉る。
それを聞いた十六夜は揺する事をやめると、素早く唇を重ねる。
夢うつつで十六夜の感触を味わっていたジェンドは
十六夜が離れると再び眠りの世界へ落ちていく。
「ジェンド、起きてー」
「・・・もう一回」
再び十六夜とジェンドが重なる。
十六夜が離れると、ジェンドはまた眠りに落ちていく。
そんなジェンドにとっては幸せな循環が暫く続く。

「・・・もう一回」
「もう十回目以上したよ?」
「・・・もう一回だけ」
十六夜の言葉にジェンドは夢うつつで返す。
「最後だよ」
最後なら仕方ないと、十六夜の唇が離れるとジェンドは気力を振り絞り、起き上がる。
「ジェンドおはよー♪」
「おはよう」
ジェンドはまだ半分ぐらい眠っている脳で返事を返す。
「朝ごはん食べに行こ」
「ああ、その前に」
そう言いながらジェンドは十六夜をベッドに押し倒す。
「お前にお返ししないとな」
そのまま唇を重ね、深いキスをする。

暫く十六夜を味わい、本格的に始めようとジェンドが唇を離すと、十六夜が口を開く。
「でも、カイもさっきから待ってるよ?」
その言葉の意味をまだ少し寝ている脳で暫く考え、ジェンドは聞き返す。
「・・・待ってる?」
「うん、そこで」
突然顔に冷水を掛けられたような衝撃を受け、ジェンドの意識は完全に覚醒する。
十六夜が指差す方、部屋の入り口辺りを見ると、確かにカイが立っている。
ジェンドの目が細く、鋭くなる。
「いつから居た?」
「え?いや、俺は、ええと」
「僕と一緒に来たよね」
何故か言葉に詰まるカイの代わりに十六夜が答える。ジェンドの目がさらに鋭くなる。
「そうか」
十六夜の頭を撫でながら、ジェンドは空いている手でベッドの脇の剣を鞘ごと持ち上げる。
「何か見たか?」
鋭い目と口調で、ジェンドはカイに問いかける。
「いや!俺は何も見てないぞ!」
カイは弾かれたように答える。
「じゃあ出ていけ。私と十六夜は少し用事があるから、朝食は先に食べておけ」
「そうだな!じゃあ!」
妙にハキハキ答えると、カイは逃げるような速度で消える。
それを見送ったあと、ジェンドは剣を置くと、再び十六夜に覆いかぶさる。
「十六夜、続きをしよう」

結局、十六夜とジェンドが朝食を食べたのは昼近くになってからだった。