まるで、彼女の幼い頃の姿を見ているようだ、と、彼は場違いにもそう思った。
まるで、飴を舐めるように彼の男根に舌を這わせるものだから。
少年のように健康的に日焼けした指がそっと竿の部分を包み込み、
少女の口唇がヌルリと糸を引きながら離れた。

「気持ち良く、ない…?」

紫紺色の瞳がおずおずと彼を見上げる。

「んっ、気持ちいいヨ、イリアちゃん。ただ…」

一旦言葉を切り、それから

「本当に、いいのかな、って。そりゃあ、ここまでさせておいて今更事の是非を
問うのもおかしな話だけどサ」

やや冗談めかして締めくくる。
目の前に跪き、先ほどまで彼に口での奉仕を行っていた少女は
「コトノゼヒ」ってなんだろう、と少しばかり考え込み、それから思考を放棄して
ニコリと微笑んだ。そのままゆっくりと彼の上に倒れ込み、肩口にかかった
長い黒髪をサラリと掻き上げる。

幼げな容姿と裏腹に、その動作はいやに淫靡だった。

「僕、何て言ったらいいのかわかんないケド……」

柔和な笑みと、けだるそうな瞳で見下ろしてくる、愛らしい少女。

「でも、こういうコトしてもいいって思ったのは、カイ兄さんだからだよ」

ふんわりと柔らかな乳房が、じれったいほどゆるゆると押しつけられて、
首筋に滑らかな頬が埋められる。少女の体は柔らかく、温かく、そして軽かった。

「イリアちゃん、あったかい」

腰をゆるく押しつけたまま、ごろりと半回転して少女を組み敷く。
少女はクスクス笑いながら、「カイ兄さんも」と答えた。

そのままゆっくりと口唇を重ねる。
しばしの間、ついばむようにふわふわした口付けを交わしていたけれど、
そのうちに唇に舌を這わせ合うようになり、最終的には舌を吸い合うようになった。
彼が指を、舌を全身に這わすたび少女の口唇から甘やかなため息が漏れ、
控えめながらも掠れた嬌声が部屋に響き出す。
内腿に口付けそっと脚を開かせると、さすがに怖いのか少女の顔に怯えが浮かぶ。

「カイ兄さん……恥ずかしいよ…」

こればっかりは何を言ってもしようがないので、ただ優しく微笑んで頭を撫でた。
くすぐったそうにして、少女の表情が申し訳程度にゆるむ。

「あぅ…」

柔らかい部分に舌を這わせ、丹念にスリットを開き敏感な箇所を探る。
少女の腰がゆるゆると動き出したところで舌と指とでの侵入を開始する。

堪えきれず大きくよがる少女の声を後頭部で受けながらいやに冷静に愛撫を続けた。

空いた片手で太股を撫でさすり肩に担ぎ上げると、少女はびくりとふるえた。

そっと頭を撫で、大きく開かれた脚の間に硬く滾った自身をおし当てた。

心の準備をさせるように一呼吸おいて、侵入した。


翻る長い紫紺の髪に、赤紫色を重ねる。

日焼けした肌に、いっそう濃い褐色の肌を思い出す。

これは少女への裏切りだと心が叫ぶ。

そうしてぞっとするほど冷たい声が、それは少女も同じだと囁く。

少女の目に映る瞳の色が青ではないであろうことに気付いているのに。

金の髪に他の人間を重ねているであろうことに気付いているのに。

自分の存在に兄を重ねているのであろうとわかっているのに。


ただ、ぬくもりを与えてくれる相手にすり寄っているだけだとわかっているのに。

想う相手は決してこの腕に抱くことはできないだろうという
哀しい確信を互いに抱いたまま、慰め合う行為。


それでも少女は痛みを孕んだ快感によがり、おとこは彼女の中で性を放った。