城下は雨が降りしきる中、アドビスの城のベットの上で、
またシオンとイリアが黙って向かいあっている。

いつもの強気な表情のシオンと、妙に顔が赤いイリア。
「ほら、飲めって・・・」
「う〜・・・・・・」
「飲むって言っただろ、さっき」
「だって、こんなネバーっとして、白濁としてるの・・・」
イリアは、自分を見下ろしているシオンの眼を見ないようにして、
いつものように言い訳を続けようとする
「の・め・!」
「むぐ・・・・・・」
イリアの鼻を掴んで、強引にワイングラスに注がれた白濁液を流し込むシオン。
口の中全体にまとわりつくぬめりと、苦い味が口中・・・いや、喉にまで広がる。
「ほら、飲み下せ!」
「げほっ・・・ゲホゲホッ」
「よーし、飲んだな、この忙しいシオン様に手間かけさせて・・・」
シオンは、ほっと肩を下ろして、そのままイリアのベットに入ろうとするが・・・
「シオンのバカ!あんな苦くて不味いの、いくらシオンのでも・・・」
さっき飲まされた白濁液がよほどいやだったのか、シオンをポカポカ殴りつける。
「ほら、じっとしてろ・・・まだ熱だってあるんだろ、ん?」
「うん・・・」

二人が一緒に眠るベットの横のテーブルの上には、
風邪に効く粘り気の強い漢方を磨り潰した乳鉢と、どうやら苦味を誤魔化すために使ったらしき牛乳が置かれていた。