「あのな、イリア。今日はバレンタインデーといって、古代ローマ時代の・・・・」
以下、原稿用紙2枚分ほどの長ったらしいバレンタインデーの説明と、とある国ではチョコレート菓子を贈る風習があるという説明が続く。
「あうぅ〜・・・・プシュー」
「嗚呼!イリア!・・・照れ隠しでつい、長く説明しすぎちまった・・・」
知恵熱を出して倒れるイリアと、それを受け止める素直じゃない天才魔法使いシオン様。
「シオン、素直にチョコ欲しいって言えば良いのに・・・」
「・・・・・照れる・・・隠す・・・・・逆効果」
後ろから、予期せぬ者の声が響く。
「だぁぁ!?レムにザード、なんでここに」
「ここ・・・・・・イリアの家・・・」
「そんな事すら忘れてるなんて、舞い上がってるわね♪」
そう、都合上舞台はなぜか、イリアの家だったりするのだ。
「う・・・」
図星なのか、そのままフリーズするシオン。
一時の沈黙の後、ザードがいつものように片言の言葉を発する。
「外の泉の水・・・・冷たい。飲ませる・・・イリア・・・目、覚める」
「あ、そうだなじゃ、じゃあ行って来る」
ドアの閉まる音と、小枝や落ち葉を踏みしめながら離れていく足音。
「・・・普通水袋やバケツで水汲んでくるのに、イリアのほう負ぶって行っちゃったわよ」
「ああ・・・焦ってる」
「ホントっ判りやすい・・・」

普通に仲間ダト思ってた時は何ともナカッタが・・・こうして、女としてみると・・・膨らみかけの胸が・・・。

「ぐぅぅぅ・・・負ぶっられっか!」

突然の大声に、驚いて道をあける森の仲間達。

うん、コレなら胸が背中に当たって理性の箍が外れそうになることも・・・
(今度はどうやら、お姫様抱っこらしい)


寝顔見えるし、寝息がオレ様の首にかかるし、余計危険じゃないか!!

色々思いながらも、歩行速度はまったく変わってないあたりが流石に、高位のウィザードたる者なのか。
そんなわけで、悩みながらも泉が視界に入ってくる。

ふーやっとついたか。
さて、水汲んで飲ませるとするか・・・本当に静かだな、ココ。
モンスターに襲われても、家からも村からも結構距離あるし、気を抜かないようにしないとな。
ん・・・まてよ、誰も来ないってことは、このままイリアの唇奪っても

・・・イカンイカン、何を考えてるんだ、俺様は。

しかし、もしここで俺がイリアに手を付けてキズモノにしたり、
もしも子供ができちまったりして、コイツも親になったら今までみたいに無茶しなくなる。
・・・ひいては、危険極まりないこんな旅を止めて、アドビスに帰ってイリアや我が子と一緒にまったり過すという平和な生活も。

・・・・・・・・。
けど、イリアが泣く顔・・・絶対見たくないぞ・・・・本当に、ナニ考えてるんだ、俺様は!

「んぐ・・・・?・・・あれ、ボク家で倒れたはずじゃ・・・」
「よぅ」
「ようじゃないよ、君は何してるんだよ!ここは、いつも水汲みにきてる泉?」
その後、結局散々理性か本能か、迷ったようで時刻は夕暮れ。
二人の目の前には、魔法で倒したモンスターの屍が累々と・・・。

「・・・いや、ちょっとな・・・」
「ちょっとじゃないよ、保存食しかないから晩ご飯作るのも、結構時間掛かるんだぞっ急いで帰るよっ!!」
「悪かったナ、痛っ・・足が」
「もう、ホラ捉って」
「・・・・・・やっぱり、イリアは笑顔やムスーっと怒った顔が似合うな・・・」
「何か言った?」
「いや、別に・・・」

結局、戦闘中に転んで不可抗力で唇奪っちまったなんて・・・誰にも言えねぇナ・・・。

「シオン・・・」
「ん、何だ?」
「今度は、ちゃんとキス・・・」
「?!?!?!?!・・・・・・・・ナ、ナナ・・・」
「あは・・・実は、もう目が覚めてたケド、
ボクのこと必死に守ってくれる姿見てたら、もうちょっと守ってて欲しいナァとか・・・」
「・・・・・(顔真っ赤)」