「カブリッ」

うぎゃぁぁぁっ〜〜〜〜!?

な、なんだ頭・・・特にこう頭部あたりにべとべとした液体と鈍い痛み・・・

「シオーン・・・ご飯れきたよー」

イリアの声ととみに、痛みが薄れる。
どうやらイリアが、俺様の頭に噛み付いていたようだ。
ここまで毎回毎回、幸せそうな寝顔で寝ぼけられると、
怒る気力も薄れてくるし、いやだいダンスを踊るわけにもいかなくなってくる。

「はっはっは・・・本当にお二人は仲が良いですな」

「ば、婆。脅かすなやい」

「はて、何のことですかな。もうとっくに昼近いですぞ」

「げ、もうそんな時間か・・・。わかったイリアを起こしたら食堂に・・・ってうわああああ〜〜〜」

「むにゃむにゃ・・・」

寝返りをうったイリアに圧し掛かられ、
橋より重いものを持ったことがない、育ちのいい俺様はあっさりそのまま下敷きにされる。

「イリア・・・いい加減起きろよ」

「朝から夫婦漫才してて疲れないの、あんた達」

レムの台詞が耳に痛い・・・・・・ここのところ、こんなほのぼのボケばかりの日々だ。

「ウリック、左手の雑魚3匹は任せたっ!!」
「3匹なんて、多すぎるよ、これ〜」
「手合わせで城の忍びを全滅させたのはお前だろ、無理でもやれ」
「そんあこといって、シオンなんて控え室に魔法打ち込んだじゃないか〜」

そして、今日も最近日課と化している、城下の畑に出るモンスターの掃討。
イリアが色々五月蝿いので、基本的には追い返すだけにしている。
戦闘の時にウリックとつい呼んでしまうのは、一緒に戦っていた頃の癖だ。

「このこのこのこの〜」

向こうは順調そうなので、俺様も俺様で自慢の呪文の詠唱に入る。
水晶から教わった古代呪文は体への負担が半端じゃなく酷いので、親父に買わせた書物で一番派手なやつだ。

「とうっ!!!」

よじ登っていた樹から、華麗に着地し、呪文を放つ。
一面に閃光と、細い稲妻が落ちると、魔物たちは森へ逃げ帰っていく。

これで一仕事を終えたと確信し、その場に座り込む。
あとは、イリアが相手をしている雑魚を、森に返せば今日の分は終りだろう。

「きゃぁぁ〜〜〜〜〜」

と、油断していたところにイリアの悲鳴が響く。
グロいものや、気持ち悪いものを見たときのような軽いものではないのが、長い付き合いで瞬間的に分かる。

「あ、シオン。イリアが・・・イリアがぁ〜〜!!」

「ウリックがどうしたって、レm・・・ブフッ・・・」

イリアがいる方角に目を向けた瞬間、鼻血で俺様の視界が紅く染まる。
どこぞの、ジュウハチキンとか書いてある書籍にでも出てくるような触手の集まった生物に、
衣服を絡め取らて胸をはだけ、顔を真っ赤にして涙を浮かべながら、助けを求め俺様の方を見ていたのだ。

「う、失血で頭が・・・」

「ちょ、ちょっとシオン、しっかりしなさい、こら!!」

鼻血から来る貧血で、レムに頬を叩かれているのにどんどん意識が遠のいて行く・・・。
くそっ、俺サマがもっと健康的な体してたら・・・。

視界が暗くなり、意識が途切れる・・・ブラックアウト