「やっぱりここにいた〜!私の推理ってば完璧!!」
イリアは得意気な表情を浮かべて、アドビス城の書庫で一人本を読んでいたシオンに近づいた。
「何だ、その満面の笑みは。」
シオンが視線の先を手にした本からイリアに移すと、イリアが興奮気味に、
「あのね、私ね、ずっとシオンのこと捜してお城うろうろして・・・
見つからないからだう〜ってなってた時、前から神官さんが来てね、
その神官さんが持ってた聖書を見て、ぴ〜んと来たんだ!シオンは絶対ここにいるって!
えへへっ凄いでしょ、私の推理♪」
と身振り手振り説明してくれた。
「あぁ、凄い凄い。偉かったな〜」
とわざとらしい棒読みで答えると、シオンは視線の先をまた元に戻した。
その行動は流石のイリアにも感に障ったようである。
「ちょっ・・・人が苦労して探し回ったのにそれはないじゃないか〜!?」
「別に探してくれと頼んだ覚えはないゾ」
「むぅ〜・・・・・・」
暫く黙り込んだ後、口喧嘩では勝てないと踏んだイリアは、強硬手段に出た。
「えぃっ!」
「あっ、こら、何すんだ・・・!!?」
それはシオンの手から本を取り上げるという単純な行動だったが、
イリアが思っていたより効果があったらしい。
「何幼稚なコトしてんだ。それ最近やっと手に入れた魔法書なんだゾ!返せ馬鹿!!」
珍しく怒鳴り気味な口調が何よりの証拠。
イリアは調子に乗って、
「や〜だよ。シオンが私の話ちゃんと聞いてくれるまで返さないもんね!」
と、力いっぱい本を抱きしめて、くるりと背を向けた。
その行動を遠目に見たシオンは冷静さを取り戻し、
(マジでガキか・・・コイツは・・・・・・)

「わかった、わかった。お前の話、ちゃんと聞いてやるから、取り敢えずそれ返せ。」
「そんな心のこもってない“わかった”じゃ駄目!」
「・・・わかりました。これでいいか?」
「もっと感情や心を込めて!!!」
「・・・お前なぁ」
「つ〜んだ」
イリアは背を向けたまま、こちらに振り返ろうともしない。
「・・・・・・・・・本当に返す気ないんだな?」
「・・・え?」
シオンの口調がいきなり変わったので、イリアは思わず振り返ってしまった。
「お前がその気ならこっちだって考えがあるんだゾ?」
シオンが意地悪そうに笑ってるのが視界に入った。
かと思うと、次の瞬間シオンの唇がイリアの唇に重ねられた。

(!!??)

(そりゃぁ両想いだし、キスしたことも何回かあるけど・・・)

「んっーんんーーー!!!」
いつもと違う激しいキスに戸惑い、イリアは何とかシオンを引き剥がそうと試みたが、
シオンの両腕はしっかりとイリアの体を捕えていて、逃げる事はできなかった。
(シ・・・シオンって、こんなに力あったっけ・・・・・・?)
イリアがぼんやりと疑問に思い始めた時、シオンの舌がイリアの口内に入ってきた。
(し・・・舌が入っ・・・!!?シオンってばさっきから何考えてるの!?)
少し恐くなったイリアはぎゅっと目を閉じた。
その間も、シオンの舌はイリアの口内を侵し続けた。
(あ・・・でも、何か気持ちいい・・・・・・・カモ・・・)

大きな吐息をついてシオンがゆっくりと唇を離した時、イリアの思考は完全に溶けていた。
が。
「ん!?あ〜〜〜!!!本!!!いつのまに!?」
イリアが両手に抱えていたはずの本を、シオンがさも当然のように片手に持っているのを見て、すっかり醒めてしまった。
「本ならお前が感じてる間に取り返させてもらったゾ?」
シオンは魔法書片手にニヤニヤしながら言った。
「ひ・・・酷い!本取り返すためだけに私にあんなエッチなキスしたの!!?」
イリアは弱冠涙目でシオンを非難したが、
「お前がガキみたいなコトするからだろうが。」
『自業自得だ』と言わんばかりの目つきでシオンは一蹴した。
「うぅ〜〜〜・・・」
と項垂れたイリアは、本当に泣きそうになった。それにシオンは思いっきり動揺したのだった。
「わ・・・悪い!俺様もちょっと調子に乗りすぎたな・・・謝る。」
と視線を泳がせつつ詫びたが、その心中はと言うと。
(あぁ・・・何で謝ってるんだ俺は・・・
こんなんじゃいつまで経っても先に進めねーじゃねーか・・・・・・)
と、自分の不甲斐なさに落胆していたのだった。
「・・・・・・・・・。シオン。」
「あ?」
イリアはそっとシオンの右手を取ると、手の甲に軽くキスした。
「イ・・・イリア!?」
驚くシオンを遮って、イリアは笑顔でゆっくりと喋り出した。
「大丈夫だよ。ちょっといつもと違ったから、ほんのちょっぴり驚いただけ。・・・でも・・・でも嫌じゃなかったよ?」
その言葉はシオンの理性の箍をはずすのに、十分すぎた。
「私の方こそゴメンね・・・シオンの読書の邪魔しちゃっ・・・」
言い終わらないうちにシオンがイリアを抱きしめて、そして口づけをしていた。今度はいつもの、優しいキス。
「んっ・・・」
そっと唇を離すと、シオンは真剣な眼差しで呟いた。
「お前・・・“嫌じゃなかった”なんて言うんじゃねーよ・・・・・・
止まらなくなるだろ?」
イリアはやはり微笑んでシオンに思い切り抱きつくと、
「止まらなくていい・・・」と囁いた。

広い広い書庫に、静寂が流れる。
二人分の心臓の鼓動が、はっきりと聞こえる。それだけで、特別な気分になる。
「んっ、は・・・んぅッ」
シオンは深い深い口づけを何度も与えながら、イリアを本棚に凭れかけさせた。
「背中、痛くねーか?」
と少し唇を離して早くも吐息を乱れさせ始めたイリアに尋ねると、
「ん。平気・・・」
という答えが微笑と共に返ってきた。その微笑の、なんといとおしいことか。
(コイツ・・・こんなに可愛かったんだナ・・・・・・)
と心の中で思いながらまじまじとイリアを見つめていると、今度はイリアの方から
「どうしたのシオン?」
と聞いてきた。
シオンは、ふっと、軽く笑って
「何でもねーよ、馬鹿・・・」
と言う言葉と共にまた唇を重ね、それと同時に右手を胸部に伸ばし、服の上から膨らみを確かめた。
「ひゃわわっ!?」
「そんな色気の無い声上げるなよ・・・」
シオンは苦笑しながらも、ゆっくりと発育途中の胸を1回、また1回と揉んでいく。
「ちょっ・・・や、駄目・・・んぅ・・・あッあ・・・」
「何が駄目?」
シオンは首筋を吸いながら、意地悪そうに聞いた。
「もっと・・・ちゃんと・・・・・・してよぅっ!」
イリアが涙目で叫ぶと、シオンはするすると服の下に右手を入れて、突起部を軽く撫でた。
「やっ、あァん・・・」
「お前、ニブイ割にはこういうのは本当敏感何だナ」
「そんっな・・・いじ、わる・・・言わないで、よぉ・・・・・・あんっ!」
シオンがイリアの乳房を弄るたびに、イリアの体がぴくん、ぴくんと小刻みに跳ねた。

「ここにキスしていいか?」
「え・・・えぇっ!?」
「いいんだナ」
「ちょっ・・・まだ何も言ってな・・・あん!」
イリアの返事も聞かずに、シオンはちゅっ、と音を立てて乳首に口づけた。
しばらくして、満足したらしいシオンは、一旦イリアの胸元から顔を離して
「気持ちよかったか?」
と耳元で囁いた。
「う、ん・・・」
と顔を赤らめ、掠れた声でイリアは頷いた。
「じゃ、ここは?」
シオンの右手が、今度はイリアの下半身に伸びる。
「あぁッ!?」
イリアの体が先程より大きく跳ねた。
シオンは何度か口付けを交しながら、既に液であふれたその部分を何度も撫でた。
「んっ、あ・・・やっ、あん・・・あっ・・・」
「凄ぇーナ、もうこんなに濡れてる・・・自分でも解るだろ?」
シオンはわざと水音を立てて、襞を激しく撫で回した。
イリアは喘ぎ喘ぎ、かろうじて
「わっ・・・かんないよぅ・・・!」
とだけ言えた。
「しょーがない。それなら優しい俺様が解らせてやるか」
シオンは指に纏わりついた液を一通り舐め終えると、中指をイリアの中に押し込んだ。

「んぅっ!!あッ・・・あん、あぁッ、あ・・・!」
「これでも解んないか?」
シオンは中を掻き回しながら、相変わらず意地悪な目つきで聞いてきた。
(何で今日のシオン、こんなに意地悪なの〜!?)
と心の中で泣きながらも、
(だけど・・・今日の私も、何か・・・変)
(もっと、もっと、気持ち良くなりたいって思っちゃう・・・)
という想いの方が勝っていた。
そしてその願望を、乱れた呼吸を必死に整えながら紡いでいく。
「わ、かった・・・から、だから・・・っ、あっ、ね・・・ねぇ、シオン・・・」
「何だ?」
シオンはその言葉の続きを知りつつも、イリアの口からその言葉が聞きたかったので、
やはり意地悪く尋ねた。
「シオンと・・・一つになりたい・・・・・・」
その言葉を確認して、シオンは指を引き抜き、代わりにシオン自身を押し込んだ。
「あッ・・・んッ、はぁ、あっ」
ゆっくり、ゆっくり、奥へと進んでいく。

その途中。ふとイリアの顔を見ると、
その大きな瞳から大粒の涙をボロボロと零れさせていた。
これには流石のシオンも驚くわけにはいかない。
「わっ悪い!・・・やっぱ、痛いか?」
「・・・・・・・・・」
イリアは俯いたまま微かに震えているだけで、返事はない。
微妙な沈黙が流れ、やがてイリアの方からゆっくりとシオンにキスしてきた。
最初は少し混乱したが、シオンは直ぐにイリアの舌を絡みとって熱い口付けを交す。
やがてゆるゆると唇を離すと、イリアは必死に痛みに耐えながら
「平気・・・だから、やめないで・・・」
と漏らした。
「イリア・・・」
(ヤバイ・・・可愛すぎる・・・・・・)
シオンは今更ながらに、目の前の少女の可愛らしさを再確認した。
(普段があれだから・・・こういう時、余計可愛く見えるんだナ、きっと・・・)
シオンはごくり、と唾を飲み込むと、
「じゃぁ・・・もう泣いて謝ったって、やめてやらないからナ?」
と、いう言葉と共に、ゆっくりと腰を動かし始めた。
「んっ、あん、あふっ・・・や、あ、あぁん・・・」
イリアは揺さぶられながら、シオンに必死にしがみついた。
「気持ちいいか?」
と尋ねられて、イリアは無言でコクコクと頷いた。

(本当は、痛いのとキモチいいのが混ざって・・・何か変な感じなんだケド・・・)
イリアの耳元に、シオンの乱れた吐息がかかる。
(あ、シオン、キモチいいんだ・・・?)
(シオンが、私でキモチよくなってるんだぁ・・・)
その事実だけで、イリアの身体はより敏感になる。
「はぁ・・・あっん、あぅ、んっ・・・あっ」

(知らなかったーーー自分の体がこんなに熱くなるなんて・・・)

「シ・・・オン」
と掠れた声で愛しい人の名を呼べば、まるでこちらの心のうちを読んでいるかのように、シオンから口付けが降ってくる。

(知らなかったーーー好きな人と触れ合うのって、こんなにキモチいいなんて・・・)


(それからーーーそれから・・・こんな事言ったら・・・シオン、怒るカナ?)



(あぁ、シオンって男のヒトだったんだなぁ・・・・・・)

繋がる事の幸せを噛み締めながら、二人は同時に果てた。

「ミト、お前こんな所に何しに来たんだ?」
「イリアお姉様が急に倒れられたって聞いて、お見舞いに・・・」
ミトは心から心配そうな表情で答えた。その小さな両腕には、見舞いの品らしい彩りの花が抱えられている。
その真摯さにシオンは罪悪感を抱きつつも、
「あ〜・・・見舞いなんていらん。明日にはもう治ってるカラ」
と完全に追い返しモードに入った。誰であろうとも、真実を知られるわけにはいかない。
「でも・・・」
「いいから、さっさと戻れ!!!」
「はい・・・」
シオンの有無を言わさない迫力に、ミトはあっさりと引き下がった。
「全く・・・」
ミトの姿が視界から消えたのを確認して、シオンは大きな溜息と共に部屋に戻った。
「ミトちゃん、ゴメン!!!」
部屋の中では、イリアが仰向けで寝そべったまま、目を瞑って顔の前で両手を合わせていた。
「ミトの相手は俺がするから、お前は気にするな。それより、まだ痛むのか?」
「うん、ずっとズキズキしてるんだ〜」
とあっけらかんに答えるイリア。
「お前・・・そんな嬉しそうに言うなよ」
シオンは呆れながら言った。
「だって嬉しいんだもん」
「何が?」
「まだシオンと繋がってる気がして・・・凄い嬉しい!」
と満面の笑みで言った。
「イリア・・・」
シオンはイリアの元へ歩み寄って、そして、そっと額にキスした。

「ちょ・・・待ってよ!さっきしたばっかだし、痛いし・・・無理だってば!」
イリアがあまりにも慌てるので、
「しないって。俺様そこまで飢えてねーよ」
シオンは苦笑しながら答えた。
と、そこへ、ドアの外から
「イリア殿ー、元気かね?」
と言う声が聞こえた。
「あの声は・・・親父だな・・・」
シオンは“またかよ”とウンザリした顔で、ドアに近づいた。
「適当にあしらって、追い返すか」


結局、イリアが動けるようになる翌日の午後まで、
真相を隠し通そうとするシオン様の戦いは続くのであった。