12 名前: BAD DREAM or HAPPY DREAM? [sage] 投稿日: 2005/05/03(火) 13:21:40 ID:rVFNMGqG 「…待てッ!!!」 誰もいない廃虚と化したその神殿の廊下を、イリアはひた走っていた。 外は酷い嵐で、ガラスが大破した窓からは雨が中まで突き刺さり、雷鳴が止む事無く鳴り続けている。 旅の途中で立ち寄った大きな国。そこはアドビスと同じく僧侶を中心とした法力国家であった。 この国に、魔物の群れが攻めて来たのは今日の夕方頃。その数や尋常ではなかった。 宿で休みを取っていたイリア達も、いてもたってもいられず、魔物と戦う僧侶や衛兵達に加勢した。 魔物を気絶させるだけに留めて戦うその中で、あの男を見た。 褪せた金の髪。 赤い仮面。 ぎらぎらと濁った金の瞳。 そいつに気づいたのはイリアだけだったらしい。イリアはレムに十六夜の事を頼むと、一人前線を抜け出した。 「イールズオーブァ!!!」 轟くいかずちの騒音に掻き消されないように、怒りを込めて叫んだ。 前を行くその男は、その声を然程気にする様子もなく、ふわふわとまるで亡霊のようにどこかに向っていた。 「…逃がさない。」 決意を込めて呟くと、走る速度をまた上げた。 13 名前: BAD DREAM or HAPPY DREAM? [sage] 投稿日: 2005/05/03(火) 13:25:55 ID:rVFNMGqG 「………ここ、は?」 イールズオーブァを追いかけて辿り着いたのは大広間。 息を整えがてら周りを見渡す。 崩れた柱や女神像に、ひび割れたステンドグラス。今は無残な姿だが、まだ神殿として機能していた頃は、恐らく礼拝等に使われていたのだろう。 この場所の在りし日の姿を想像していると、 突如人の気配――恐ろしく冷たくおぞましいものだった――を感じた。 気合を入れ直して、その人物と面会する。 夜の闇と部屋に灯かりが無いことも手伝って、ぼんやりとシルエットが確認出来るものの、顔はよく解らない。 (えっと……兄さんとシオン殺したコトを怒って、魔物(友達)を使って街をめちゃめちゃにしたコトも怒って、何で生きてるのか聞いて、それからボコボコにして……) ゴクンと唾を飲み込んで、一つ大きな深呼吸をして、最初に発する文章を決めた。 「…ボク、怒ってるん…」 両手に握りこぶしを結んで、思い切り叫んでやるつもりが、途中から勢いを失ってしまった。 「だから…ね……?」 雷光で闇に浮かび上がった人物が、イリアの想定していた人物と違っていたからだ。 (え……?え……?) イリアのよく見知ったその人は、宙に浮かびながらよく見慣れた格好で、よく見慣れた眼差しでこちらを見下ろしていた。 「何で」と疑問を発するより先に、無意識にその人の名を呼んでいた。 「シ……オン?」 呼びかけられたシオンは一間隔置いてから、 「久しぶりだナ、イリア。」 と、うっすらと笑った。 14 名前: BAD DREAM or HAPPY DREAM? [sage] 投稿日: 2005/05/03(火) 13:29:08 ID:rVFNMGqG それに違和感を覚えた。何が違うかは具体的にはわからなかったが、確信があった。“絶対に違う”と。 「……誰!?」 疑心を込めて問い掛けた。 シオンはやはり一間隔置くと、またうっすらと笑って 「誰って……いくら物覚えの悪いお前でもひどいナ。俺様のコト忘れたのか?」 と、ゆっくりと尋ね返した。 忘れる訳が無い。だからこそ、“この人は違う”という想いが強くなる。 「お前は……違う。シオンじゃない!!」 それを聞いたシオンは心外とばかりに、 「…何言ってんだよ。お前が見捨てたシオンだろ?」 と答えた。その言葉にすかさず反応するイリア。 「違う!!!見捨てたわけじゃ……だって、あの時……!!!」 反論しようとするも、言葉に詰まってしまった。 (あの時……どうなったんだっけ……?) 頭を抱えて改めて思い返してみる。 今まで考えないようにしていた事。それは友の死のシーンを思い出したくないというのが第一の理由だが、もう一つあった。 それは、一部の記憶の不自然な欠如。シオンの死を目の当たりにしてから、オッツキィムに戻るまでの記憶が一切ないのである。 その理由を考えたくはなかったのだ。 「…思い出してみるか?俺が死んだ後、何が起こったか。」 シオンがパチン、と指を鳴らすと、あの日の光景が煩わしい程鮮明に、イリアの中に広がった。 15 名前: BAD DREAM or HAPPY DREAM? [sage] 投稿日: 2005/05/03(火) 13:31:02 ID:rVFNMGqG 紅の海に浮かぶシオン。同じく紅に染まったまだウリックだった頃の自分は、 既に事切れた彼を抱きしめながら、どうしたらいいか分からないでいた。 レムも悲痛な表情で二人の間をぐるぐると飛び続けていたが、 もう月が離れかかっているというのに、ウリックがいつまで経ってもその場を動こうとしないので 『ウリック。離れがたいのは分かるけど、もう帰らないと。』 と、オッツキィムへの帰還を促した。 「やだ。ボク、ここにいる……シオンと一緒に……」 『駄目よウリック!』 「何で駄目なの!?」 金切り声をあげるウリック。最愛の友の死を目にして、自暴自棄になっているのは誰の目にも明白だった。 しかし、ここで引き下がる訳にはいかない。 同じ旅の仲間として。 彼女を任された者として。 何がなんでも彼女を連れ返る必要が、否、義務がレムにあった。 『駄目に決まってるでしょ!!?』 レムがウリックよりも大声で叫んだ。 『シオンが最期に何て言ったか聞いてなかったの!?“生きてくれて”って…そう言ってたじゃない!?』 レムに言われてウリックも「あ…」という表情をして、いくらか落ち着きを取り戻した。 それを見てレムも声の調子を下げる。 『だからあなたは生きなきゃ駄目なのよ…絶対。シオンの最期のワガママ……叶えてあげましょう?』 レムは精一杯優しく微笑んだが、溢れる大粒の涙を堪える事が出来ない。 「…うん。」 ウリックは涙を拭って返事した。 「…帰ろうね、シオン。」 シオンも誘う形のその言葉に、レムはきょとんとした。 「こんなトコロにシオンを一人ぼっちにしておけないよ。シオンも一緒に帰って……オッツキィムでお墓……作ってあげなきゃ……」 『…そうね。一緒に帰るべきよね。』 流れる涙を一生懸命拭って、二人で微笑みあった。 16 名前: BAD DREAM or HAPPY DREAM? [sage] 投稿日: 2005/05/03(火) 13:33:11 ID:rVFNMGqG 「あ、待って。」 ウリックは突然その場を離れて、彼女が戻って来た時にシオンが凭れ掛かっていた壁の方へと走っていった。 『今度は何!?』 そして何かを拾い上げると、また急いで戻って来た。 「コレ…。」 ウリックがおずおずと差し出したのは、先の戦いでボロボロになったシオンの手帳。 『あ…。』 「コレも持って帰ってあげたいんだ。少しでも……シオンが生きてた証を残してあげたい。」 そう言って邪魔にならないように袋の中に手帳を仕舞い込んだ。 「待たせてごめんね、シオン。さぁ、帰ろ…」 床に倒れ込んだシオンを抱き起こそうとした手が一瞬止まった。 薄紅色の細長い何かの細胞組織のようなものが、蔓のようにシオンの右腕に絡み付いていたからである。それはイールズオーブァの残骸から伸びていた。 「な……に、コレ!?」 顔を強張らせつつ、直感的にとてつもなく恐ろしい事が起こっているのを感じ取り、すかさずそれをシオンから引き剥がそうとする。 しかし、弾力性のあるそれは、ウリックの力を以ってしても容易に引き千切る事はできなかった。 「コイツ……!シオンから……離れ、てっ……!!」 必死の形相で引っ張るが、それはシオンにしがみ付いたまま動こうとしない。 それどころかシオンの腕を伝って、徐々に上へ上へと這い上がってくる。 「こ……の!やめろ!やめろってばぁ!!!」 ウリックの叫びも虚しく、それはシオンの顔まで到達すると、無理矢理口をこじ開けて、少しだけ奥へと進入した。 そして。 ドクン、と、一際大きく不気味な脈動が響いて。 ピクン、と、一瞬動くはずの無いシオンの体が動いて。 じわり、とこの世の全ての色が混ざった漆黒の靄が、彼の体に染み込んでいった。 ウリックとレムは何が起こったか理解出来ずにいた。緊張のあまり、涙もすっかり乾いてしまっている。 「………シ、オ…ン?」 体をガチガチ震わせながら、恐る恐る呼んでみた。 すると、永遠に開くはずの無い瞼がゆっくり、ゆっくりと開いて、そして笑った。 それはシオンのものではない、別の誰かの笑顔であった。 硬直している自分の額に、朱く染まったシオンの右手が伸び、意識が遠のいたと思うと次の瞬間、イビスの丘にへたり込んでいた。 17 名前: BAD DREAM or HAPPY DREAM? [sage] 投稿日: 2005/05/03(火) 13:35:39 ID:rVFNMGqG 過去の映像はここで途切れ、場面は現在の廃虚の広間へと戻った。 頭を抑えながら見つめる先には、笑みを崩さず宙にたゆたうシオンの姿がある。 「思い出したか?」 「………………」 今にも崩れそうな表情のイリアを見て、シオンはくすりと笑うと彼女にその名を呼ばせるようそれとなく誘導していく。 「違うって言うんなら……俺は誰なんだよ?」 「あ……あ……」 何か言おうにも言葉にならない。イリアの瞳には、既に涙が浮かんでいる。 「俺の名を言ってみろよ。」 「イールズ…オーブァ……」 何とか絞り出した声は震えていた。雷鳴と豪雨のけたたましい轟音の中でその名がいやにはっきりと聞こえた。 シオンはその名を聞いて満足したのか、にやりと笑って 「正解だ。」 と言ってから、「あはははは」と、声を大にして笑い始めた。 しばらくしてから困惑しきった様子のイリアに、 「あぁ…すみません。慣れない口調で話したら可笑しくて可笑しくて…… …でもちゃんと似ていたでしょう?他人を真似るというのも、また一興ですね。」 と、丁寧語で解説した。そんなシオンの姿が、イリアの目には、恐ろしく絶望的なものに映った。 「やめ…て…」 イリアはシオンから顔を背けがちに呟いた。 「?何をですか?」 「シオンの顔で……そんな風に笑わないで!!!」 泣きながら絶叫した。 シオンは一瞬きょとんとしたが、また軽く笑い始め、 「そう言われましてもねぇ…?これが生来の私の話し方ですし……それとも何ですか?」 ふわりとイリアの眼前に降り立つと、一呼吸溜めてから続けた。 「こんな風に喋って欲しいのか?イリア。」 わざと彼女の名前をはっきりと、ゆっくりと発音した。 18 名前: BAD DREAM or HAPPY DREAM? [sage] 投稿日: 2005/05/03(火) 13:39:38 ID:rVFNMGqG 「ふっ……あ、ははっ、はははっ、あはははははっ」 そして突如壊れたように笑い出すシオン。更に突拍子もない事を聞いてきた。 「どうしてこの姿で会いに来てあげたと思います?」 「…え?」 突然質問され、混乱で動けなくなったイリア(それ以前に最早悲嘆で体が動かなかったが)に向って、シオンはいとも簡単に解答を教えてくれた。 「オッツキィムには彼を知ってる人がいますし……見つかると色々と面倒なので 普段はこの上に幻視魔法をかけて、〈イールズオーブァ〉に見えるようにしてあるんですよ。 それを解いて貴女にわざわざ会いに来てあげたのは……」 シオンはイリアの顎を軽く引き寄せ、唇と唇が今にも触れそうなくらい顔を近づける。 「お前が可哀相だったからだよ。」 「!?」 シオンは彼女を捉える指先の力と口調を強めて、憐れみの目でもって彼女に言い放つ。 「お前がいつまでも〈俺〉を切り離せないでいるから………あまりにも不憫でな。 スッパリ切り離させてやろうと思ったんだよ。」 イリアの目の色が変わったのを確認すると、シオンはニィっと笑って、素早く腕を放した。 「それで色々考えたんだけどさ。やっぱ〈俺〉との間に酷い記憶を作るのが一番手っ取り早いし確実だよな。」 茫然自失しているイリアの前で、シオンは一人確認するように、淡々と呟いた。 「まぁ…嫌な思い出になるか楽しい思い出になるかは……お前の心がけしだいだけどナ。」 そしてシオンが指をパチン、と鳴らすと、何処からか白い触手が伸びて来てあっという間に彼女を捉えた。 「うわっ!?何するの、シオン!?」 締め付けられた痛みで苦しそうに抗議したイリアは、思わず出してしまった言葉に自分でも驚いた。 (ボクってば……何言ってるの!?) 自身の信じられない行動に動揺すると同時に、その事に触れて欲しくなくてシオンから顔を背けた。 シオンは一瞬笑みを消したが、イリアの想いをその行動から読み取ってまたふっと笑った。 19 名前: BAD DREAM or HAPPY DREAM? [sage] 投稿日: 2005/05/03(火) 13:42:03 ID:rVFNMGqG 「えぇ……そうですよ。」 シオンは確信犯的に丁寧口調でゆっくりと喋る。 「ヒトというのは全ての判断を視覚に委ねていますからね。」 (違う…違う……) 泣きながら必死に心の中で自分に言い聞かせる。 「例え中身が違うと知っていても……」 シオンは彼女の頬を掴んで、彼女の顔を真正面に向けさせた。 「〈俺〉を拒むことはできないんだよ。」 そう言って笑うシオン。その笑顔は彼のものではない。 彼がこんなにも冷酷で歪んだ笑みを浮かべるわけがない。 この人は違う。 シオンではない。 頭では痛い程にわかっている。 わかっているのに。 (違う……のに………) 心の中で項垂れるイリア。 そして“彼”の言った通り、ゆっくりと降ってくるシオンの唇を、拒絶することはできなかった。 シオンは舌先を巧みに動かしイリアの口内に侵入すると、戸惑っているイリアの舌を有無を言わさず絡みとった。 イリアはぎゅっと目を閉じて、ただ時が過ぎるのを待つ。 一段と大きな雷鳴と同時に、シオンの舌はゆっくりとイリアから出ていった。 イリアは吐息を乱して心持ちシオンに凭れ掛かった。 「……っと。」 シオンは胸で彼女を優しく受け止めたが、その不自然な優しさが底知れぬ恐怖を誘う。 「キスだけで感じたのか?」 シオンはイリアを抱きしめてやはり優しく囁く。その言葉にイリアの頬が紅潮した。 が、全身を走る奇妙な感覚に、直ぐに顔を強張らせた。 見ると彼女を縛り付けている触手のうちの何本かがにゅるにゅると蠢いて、彼女の衣服を剥ぎ取ろうとしていた。 「えっ!?嘘……ヤだぁ……!!!」 抵抗しようにも彼女の体は多くの触手で封じられていて、声を上げて抗議するより他に無かった。 20 名前: BAD DREAM or HAPPY DREAM? [sage] 投稿日: 2005/05/03(火) 13:44:32 ID:rVFNMGqG 「何が嫌なのですか…?」 シオンはうっすらと笑っている。 「好きな男に抱かれているのだから、嫌な訳ないでしょう?」 イリアの好きな人物と、イリアを今この場で抱いている人物が一致しないことを再度強調するかのように、わざと丁寧語で喋った。 そしてまた唇で彼女の口を封じ、自分は彼女の口を嬲ることに専念し、彼女の衣服を捲るという行為を触手に任せていた。 しかし、彼女の羞恥心を煽るように、わざとゆっくり服を脱がさせる。 「…ぅんっ……んっ!!……んっ、んぅ………っ…ん、んんっ!!」 途中、触手が胸の突起や秘所を掠める度に、イリアは声を上ずらせる。 「ふあ…っぁ、……は…ぁ」 シオンの唇から解放された時には、触手によってイリアの胸が露になっていた。 すかさずその部分にシオンの手が伸びる。 「っあ……!」 そしてそのまましなやかに揉み解す。 「あ……んぁ…っ、あん」 「胸だけでそんなに感じるとは…やはり好きな人は特別……ってことなんでしょうかね?」 くすくす笑いながらシオンは三度彼女に口付ける。今度は唇にではなく、首筋に。 「あっ……や、…っん」 小さな批難を漏らしたイリアを気にする事無く、殊更ゆっくりと舌先を下方に流す。 鎖骨に辿り着いたところでそこに一つ大きな口付けを落とすと、次に胸部を軽く舐めた。 「ひぁ!…っあ、ん…」 左の乳房を柔らかに揉みしだきながら、右の乳首に僅かに舌先を押し付け、小刻みに転がしまわす。 しかしイリアの思考が完全に溶けてしまわないように、シオンは適度に力を和らげて愛撫を続けた。 そうして暫時イリアの反応を愉しむと、おもむろに彼女の下半身にも指で触れた。 しかし太ももを優しく撫でまわすだけで、大事な所には一切触れようとはしなかった。 21 名前: BAD DREAM or HAPPY DREAM? [sage] 投稿日: 2005/05/03(火) 13:46:54 ID:rVFNMGqG 「んっ、は…ぁ……ぁっ…」 イリアは呼吸を乱しながら複雑な表情を浮かべていた。 行為自体に抵抗を感じているのも確かであったし、一向に核心に触れようとしないシオンをどこかもどかしく思っているのも確かであった。 そんな相反する想いを抱えて、どうしたらいいか分からないでいる彼女に、シオンは追い討ちをかけるように聞いてきた。 「もっとちゃんとして欲しいですか?」 「え…?」 いつの間にかシオンの顔が目の前に上がって来ていた。潤んだ瞳で思わずまじまじ彼を見つめてしまった。 その穏やかな表情は確かに彼女も知っているシオンのものである。 「わかってんだぜ?本当はもっと激しくして欲しいって………俺に虐められてめちゃくちゃにされたいんだって。」 「そ…んなコト、思ってな……んっ」 シオンの台詞を咎めようとしたイリアの口が、彼の口で塞がれる。 「んっ……んふ…んぅっ…、ん…」 この口付けはイリアの意志など無視した、強引で自分勝手なものだった。 その荒々しさは、シオンが離れた後に二人の唇を繋いだ何本もの唾液の糸が物語っていた。 「ほら…さっきのキスより今のキスの方が感じただろ?」 イリアは吐息を乱してシオンを見つめるものの、何も言おうとしない。 するとシオンは何を思ったか全ての愛撫を中止して、イリアと距離を置いた。 「……………!?」 シオンは触手に羽交い締めにされたまま棒立ちしているイリアの姿を歪んだ眼差しで眺めながら、意地悪く聞いた。 「どうして欲しいか言ってみろよ。」 「えっ……」 「言わなきゃ一生このままだぞ…?」 シオンはニヤニヤしながらあられもない姿の彼女を視姦し続けている。 「……………」 「まっ、お前がそれでいいんなら俺様もそれでいいんだけどナ。」 そう言ってそっぽを向くシオン。 イリアは俯いて思いを馳せる。 (駄目だよ……言葉づかいなんかで騙されちゃ………) (アレはシオンじゃないんだ…) (シオンだけど…シオンじゃないんだ……) (シオンはあんな風に笑ったりしない…絶対に…) (だから…シオンじゃない) 22 名前: BAD DREAM or HAPPY DREAM? [sage] 投稿日: 2005/05/03(火) 13:50:00 ID:rVFNMGqG (でも……シオンじゃないけど…シオンなんだ……) 色々考えてるうちに自分でも何がなんだか分からなくなる。 そして密かに快楽を求めて疼き続ける身体に逆らえずに、ついにその言葉を口にしてしまった。 「もっと……して欲しい。」 俯いたまま静かに呟いたイリアの元に、再びシオンが近づいた。 「何だやっぱりして欲しいんじゃねぇか。」 シオンは「仕方ねぇーナ。」と笑いながら彼女の前髪を掴んで、強引に顔を上げさせる。 「でも、素直な子は嫌いじゃありませんよ?」 にこやかに言うと、口調の丁寧さとは裏腹に極めて粗雑に、彼女を床に向けて突き飛ばした。 「きゃんっ!?」 仰向けで倒れ込んだ彼女の上に乱暴に覆い被さると、恐ろしく冷たい笑顔で言い放った。 「それじゃお望み通りにしてあげましょうかね?」 言い終わるや否や彼女の乳首に吸い付いた。更にもう一方の乳房を今度は遠慮無しに激しく揉み回す。 「やっ…ぁっ…あ、ん……っは…っめぇ…あっ…!」 その荒々しさに思わず声を張り上げるイリア。 「何が嫌なのですか?さっき言ったばかりじゃないですか。“もっとして欲しい”って。」 「…っも、んぁ…こ、…なの、は……ん、いっ…ぁ、ゃあっ……」 涙声でイリアは悲鳴をあげた。 「“こんなのはやだ”、と。つまり“こんなもんじゃ足りない”ということですね。」 シオンはわざと誤った解釈をしてみせた。 「全くしょうがない奴だナ、お前は。」 苦笑しながら更に愛撫を激しくする。 「ひぁ…っ、ち、が……んっ、んんっ!!!」 「五月蝿いですねぇ。少し黙っててくれません?」 心底鬱陶しそうに吐き捨てるように言うと、器用に触手を操って彼女の口内に押し込んだ。 「んーーーっ!!んんっ、んぅ…んーー!!!」 「これで少しは静かになりましたね。」 シオンはイリア乳房を両の手で揉みくちゃにしながら、やれやれと呟いた。 23 名前: BAD DREAM or HAPPY DREAM? [sage] 投稿日: 2005/05/03(火) 13:52:55 ID:rVFNMGqG しばらく彼女の胸を愛撫した後、彼女の腹部に沿って指先をずらして秘所に到達すると、下着の上から突起を軽く摘まんだ。 「んっ!!!んふっ…んむ……んっ!!!」 明らさまに反応するイリア。その様子が愉しくて可笑しくて、シオンはソコを掴んだまま周囲を激しく撫で回した。 彼が指を動かす度に、下着の染みが徐々に拡がっていく。 「お楽しみは後に取っておきますか…」 取り敢えず下着だけ脱がしてイリアに聞こえないような小さな声でポツリと呟くと、触手を彼女の口から引き抜いた。 「ぷはっ……はっ…ぁ」 久しぶりに空気に触れたイリアは、大きく深呼吸した。 「さぁ、休んでる暇はありませんよ?」 シオンは一旦イリアの上から退くと、自身はズボンを脱ぎつつ自由を奪われ抵抗出来ない彼女を跪かせた。 「貴女、〈シオン〉のコト好きですもんね?これくらい平気ですよね?」 イリアの解答を待たずにシオンはその先端を彼女の唇に触れさせる。 思わず目を瞑り顔を背けようとするが、逃げようとした頭をシオンに両手で掴まれ、強引に根元まで頬張らさせられた。 「んぅっ!?ん、んんっ……!!?」 イリアの悲痛なうめき声と共に、じゅぷっという淫らな水音が響いた。 「全部こっちで適当にやりますから。兎に角歯だけは立てないで下さいね?」 念押ししてから彼女の口で自身を高ぶらせる。 少しの間付け根を舐めさせた後ゆっくりと先端まで押し戻し、亀頭を同じように舌で愛撫させる。 そうして少し時が過ぎるとまた根元まで引き戻した。 それを気の向くままに繰り返す。 「何だ結構上手いじゃないですか。」 シオンは悦に浸ると、ゆるやかに右手を彼女の背に乗せた。 そして裾の中から触手を這い出させ、彼女の背筋を伝ってどんどん下半身の方へと伸ばしていく。 「んむ…っ!?んんっ……!?」 背中を走る気味の悪い感触に、イリアの声にも恐怖が込もる。 触手は一直線に秘所に向かうと、意志を持っているかのように桃色の表面を撫でまわる。 「んぁ……ふっ、ん………む…ぅっ…んんっ」 雫が滴り始めて床までも濡らすようになると、触手は入り口を押し広げて中へと潜入した。 「んっ!?…んぁ……んっんっ、んーーーーー!!!」 そしてある程度奥まで押し進むと、内部で暴れ始めた。 24 名前: BAD DREAM or HAPPY DREAM? [sage] 投稿日: 2005/05/03(火) 13:55:27 ID:rVFNMGqG 「いきなり入れるとキツイだろうから先にこれで慣れさせてやるよ。優しい俺様に感謝しろよ?」 ずっと閉じていた目を恐る恐る開けて上を見上げると、シオンが笑っているのが見えた。 相手の事など考えない、自分だけ愉しんでいるような、そんな歪んだ笑顔。 その笑顔にこの人はシオンではないと思い知らされる。 しかし、〈彼〉を求めずにはいられない。 この身体は確かにシオンのものだから。 例え宿っているモノが別のモノだとしても――― そんな考えに走る自分が浅ましくて恥ずかしくて、イリアはまた固く瞳を閉じた。 その反動で目尻に溜まっていた大量の涙が下へと零れ落ちた。 闇に覆われた広い部屋に、雨音とは違う水音が反響する。 月明かりに照らされてぼんやりと浮かび上がる2つのシルエットのうち、女の方が大きく揺れた。 シオンを口に含んだままの彼女が昇天したのは、これで3度目。 それでも尚触手は彼女の内部を弄り続けている。 「おや、またイッてしまったのですか?」 シオンはイリアの頭を撫でながら笑って言う。 「こんなものでもイけてしまうとは……入れば何でもいいんでしょうかね?」 呆れ顔で呟くと、ソレの全身を咥えさせて彼女の頭を固定した。 「ほら、出しますよ?」 シオンが小さく呟くと、彼女の喉の奥から口に至るまで精子が拡がった。 「う゛えぇっっ……かはっ、こほっ…」 それを吐き出しながら酷く咳き込んでいると、ようやく下半身を含む全身が触手から解放された。 激しい脱力感で、イリアはそのまま床に伏す。 25 名前: BAD DREAM or HAPPY DREAM? [sage] 投稿日: 2005/05/03(火) 13:58:01 ID:rVFNMGqG 「はぁっ……はっ……はぁっ……」 虚ろな瞳で口呼吸をしていると、目だけで笑っているシオンが見えた。 「これで終わりだとでもお思いですか?」 柔らかに話すシオンの手はイリアの内腿を掴んでいる。 「え…?」 「まだ大事なのが残っているでしょう?」 そう言うと股を開けさせた。 「え…えッ……っやん!」 起き上がろうとするイリアよりも先にシオンの舌がソコに触れた。 先の陵辱によって濡れに濡れたその部分は、少し舌先を移動させるだけで淫らな水音を奏でる。 「んっは……やっ…ぁ…、……あっん…ふぁ…っあ…」 身を捩って善がるイリアのその部分に、シオンは所構わず口付けを撒き散らす。 溢れる蜜はどんなに掬い上げても、渇くことはなかった。 「あん……やっ、も……ぅ…あっ、んん…」 言葉で限界が近いことをイリアが漏らすと、シオンは身を起こして泣きじゃくる彼女を胸の中に引き寄せた。 意識が朦朧としている彼女を強く抱きしめて、優しく耳元で囁く。 「好きだ、イリア。」 言われてイリアの身体が一瞬ビクンと震える。 「ずっとお前が欲しかった。」 中へ入りながらシオンが酷く穏やかに告げた。 この言葉が、〈シオン〉がくれたものならよかったのに―――… そんな想いを抱きながら、イリアはシオンを受け入れた。 26 名前: BAD DREAM or HAPPY DREAM? [sage] 投稿日: 2005/05/03(火) 14:00:21 ID:rVFNMGqG そして感傷に浸る彼女の事など構わずに、シオンは最初から激しく彼女を揺さぶりたてる。 「んぅ……、っは…ぁん……っあ、んぁ…っ……ああっ…」 イリアは快楽の波に溺れきってしまわないように、シオンの背に腕を回して、何とか我を保とうとする。 そんな彼女の行為を嘲笑うかのように、シオンの動きは激しくなる一方であった。 「ひぁ……あっ、んぁ…っあ、っあ……あぅ…んぁあっ…」 今にも壊れそうな彼女を、あまりにも場違いな穏やかさを映した眼差しで見つめながら、乳房にも愛撫を加え、何度となく口付けを繰り返した。 「や…そ、んな………たらッ…んぁ……んっ、も……っぁ、うぁ!?…っあ、ぁぁあっ、あぁあぁぁぁあぁ!!!」 イリアは絶叫と共にシオンを内包したまま果てた。 熱い肌とは対照的な冷たさが、頬から全身に行き渡る。 イリアは打ち捨てられた人形のように、床に転がっていた。 その肢体には、せめてもの心遣いとばかりに、見慣れたインディゴブルーのマントがかけられてある。 「やはり貴女を生かしておいて正解でしたね。予想以上に楽しめましたよ?……色々とね?」 含みのある笑顔でシオンは淡々と喋り続ける。 「何ならまた会いに来てあげましょうか?」 にこやかに尋ねるシオンはイリアが返事できないのをいい事に、 「そんなに会いに来て欲しいんですか?仕方無いですね。」 と勝手に続けると、乱れた彼女の髪を攫って別れの口付けを落とした。 その後イリアは度々彼女の元を訪れるようになったシオンと、 この悪夢とも快夢ともとれる一時を過ごすようになる。