924 名前: IVRESSE [sage] 投稿日: 2005/04/18(月) 21:48:44 ID:PeUQpxbj 「シ〜オン〜〜!!!」 ウリックが上機嫌で声高に部屋に戻ってきたので、シオンは嫌な予感がした。 「こんな時間にそんな大声出すな……って、オイ!?」 シオンの予想通り、ウリックは顔を真っ赤にさせてへらへらと笑いながらおぼつかない足取りでこちらへ向ってくる。 途中つまずきそうになったウリックを、シオンは思わず抱き留めてしまった。 ウリックを腕に抱いてそっと顔を覗き込むと、くぅくぅと安らかな寝息を立てていた。 更によく見てみると、ウリックの背中にちょこんと乗ったレムも同じく赤い顔で眠りについていた。 「は〜〜〜……」 シオンは派手に溜息をつくと、 (誰だ……コイツに酒飲ましたのは………!?) と、静かに怒りの炎を燃え上がらせた。 925 名前: IVRESSE [sage] 投稿日: 2005/04/18(月) 21:50:14 ID:PeUQpxbj 2人と1匹で、ディアボロスを倒す旅の途中。 シオンが先導したおかげが、珍しく日没前に比較的大きな村に辿り着く事が出来た。 今はその村の宿屋の中。手持ちのお金と相談した結果、部屋は1つしかとっていない。 荷物を部屋において、夕食を食べようと食堂に行くと、盛大にパーティーが催されていた。 呆気に取られていると、パーティーの参加者の一人が、今日はこの宿の一人娘の誕生日で、 村人はおろか旅人も巻き込んでの宴だとコッソリ教えてくれた。 ここの夫婦は娘の溺愛ぶりで有名らしい、ということも教えてくれた。 ちなみに、その人もこの村とは一切関係のない旅人だったと解ったのは、2人と1匹も宴の席について暫く後の事であった。 ウリックはレムと一緒に思いがけないご馳走に素直に齧り付き、持ち前の明るさと親しみやすさをフルにいかして、 周りにいる初対面の人々とすっかり打ち解けてしまった。 その隣で、1人浮かない顔で黙々と料理を頬張り続けるシオン。 (誕生日……か……) 法力ではなく魔力を持って生まれたシオンは、アドビスにとって迎え難い存在だった。 物心ついた時から覚えているのは、嫌悪の眼差しだけ。 当然、誕生日など祝ってもらった事などない。 「シオン?どうしたの?」 いきなりウリックが聞いてきた。 「何が?」 「何が……って。シオンが溜息つくから、どうしたのカナって、思って。」 昔の事を思い出している間に、自分でも気づかないうちに溜息が漏れていたらしい。 「心配するな。なんでもナイ。」 と心の内を悟られないように笑顔で返すと、気分を紛らわせるように目の前の料理をまた口にした。 (ん〜……けっこうヘコんでたんだな、俺…) 自覚すると、どんどん気分が暗い方へと傾いていく。 (これは………かなりマズイかもな……) 「気分が悪くなった」と適当に言い訳して、慣れない賑やかさから逃げてきたのは、今から10分前くらいの事。 その時はまだ、ウリックもレムもしらふだった。 926 名前: IVRESSE [sage] 投稿日: 2005/04/18(月) 21:53:55 ID:PeUQpxbj (という事は、俺が出てきてからこの10分の間に呑まされた訳だな……あそこには子供が沢山いたから酒は出されないと思っていたが……油断した) ウリックの事となると、いちいち大袈裟に考えてしまうシオン。 ブツブツと独り言を呟いていると。 「ん……」 ウリックは目を擦りながら、ゆっくりと瞼を開いた。 「あ。起きちまったか?」 「あ〜…シオン、おはよう。」 「アホ。今は夜だ、夜。」 ウリックは、へにゃっと笑った。完全に酔いが回っているらしい。 「あ、じゃぁ、こんばんわ〜」 と言いながら、ウリックはずるずるとシオンの腕から滑り落ちた。 「うおぉっ!?大丈夫かウリック!?」 シオンは勢い余ってウリックが床に顔をぶつけるのを、寸前で何とか阻止する。 「ごめんね、シオン〜」 ウリックは妙な体勢でシオンの腕にぶら下がりながら、あっけらかんと謝った。 「いや、まぁ、無事で何より…」 シオンは少々顔を引き攣らせながら、ウリックを抱き起こした。 「ホラ、いいから酔っ払いはもう寝てろ。」 「やだ。」 「やだ、……って、お前なぁ……」 「だって眠くないんだもん!」 ウリックは頬を膨らませて、プイっと、そっぽを向いた。 そして 「やだったら、やだぁ!シオンと起きてる!!」 と、駄々をこね始めた。 「このワガママ娘が!!!」 シオンは思わず怒鳴り声をあげてしまった。 (ホント、酒入ると性格変わるよナ、こいつ……) 「じゃぁ、俺様も寝るからお前も寝る。これでいいだろ?」 と、最早タチの悪い酔っ払いと化したウリックを半ば強引に説き伏せる。 ウリックもようやく納得してくれたらしく(それでも表情からしてかなり不満そうだったが)、 よろよろと、立ち上がった。 927 名前: IVRESSE [sage] 投稿日: 2005/04/18(月) 21:57:07 ID:PeUQpxbj が、次の瞬間。 ウリックは足を絡ませて、そのまま前につんのめった。 「わ!?ウリック!!」 今度はシオンも間に合わず、シオンはそのままウリックに巻き込まれ、床の上に崩れ落ちた。 「いってー……。大丈夫か、ウリック?」 条件反射的に閉じてしまった目を開ける。 (んん!?) 事態の深刻さに思わず変な声が上がりそうになる。 ウリックの身体が自分の真下にあったからだ。図らずもウリックを組み敷く形になってしまっていた。 「わ!?すまん、ウリック……直ぐにどくから……」 と、慌ててウリックから離れようとするシオンの手を、ウリックは引き止めた。 「…?ウリック?」 「あのね、ボクね。凄く体が熱いんだ…」 とろん、とした目つきで、ゆっくりと甘えた声で告げるウリック。 その仕草で、ウリックに“女”を見たシオンの心臓が、ドクン、と大きく鼓動する。 (落ち着け、落ち着くんだ、俺様―――) 「…それは、酒のせいだ。」 「心臓だって凄くドキドキしてるし…」 シオンを微妙に無視して話を続けるウリック。 「俺様の話聞いてるか?おま………」 「ホラ、聞こえるでしょ?」 (――――え?) ウリックは両手でシオンの細い右腕を掴んだまま、そっと自分の胸に導いたのである。 丁度、あるかないかの僅かな谷間の部分に右手は収まったが、少しでも指を動かせば、 ともすれば触れてはいけない場所に触れられそうな勢いである。 (えぇぇっっっ!?) 突然の出来事に流石のシオンも動揺を隠せない。 「あ、あの〜、ウリックさん……?」 その動揺が、言葉使いにも如実に現れた。 928 名前: IVRESSE [sage] 投稿日: 2005/04/18(月) 21:58:32 ID:PeUQpxbj 「自分が何やってるか、わかってるか…?」 「…………………。」 顔に脂汗を滲ませながらシオンが問い掛けたが、ウリックは甘い表情で押し黙ったままである。 (一体どうすればいいんだ!!?) シオンは心の中でうずくまって、頭を抱え込んだ。 シオンがウリックを押し倒したまま、時は流れる。その時間が、シオンには永遠と思われるほど長かった。 「ねぇ、シオン?」 先に沈黙を破ったのはウリックの方だった。 「ハイぃっ!!?」 急に話し掛けられたので、素っ頓狂な声で返事をするシオン。 「ボクのコト………好き?」 (いきなり何聞いてくるんだコイツはーーーーーーー!!?) いっその事思い切り叫んで盛大につっこんでやりたいのを何とか思いとどまって、平静を装い彼女の質問に答える。 「…好きか嫌いかと言われれば、まぁ、好き……だが……?」 シオンは目を泳がせながら、いくらか照れ気味に呟いた。 「…ホント?」 「…こんな時に嘘ついてどうすんだよ。」 「よかったぁ…」 ウリックは心底嬉しそうに笑った。 「ボクもね、シオンのコト大好き。」 太陽を彷彿とさせる明るい笑顔でウリックはすっぱりと言ってのけた。 「…そいつはどうも。」 シオンは努めて平気でいようとしたが、こんなウリックを目の当たりにして、どうして冷静でいられようか。 (落ち着け、落ち着け、落ち着け、落ち着け、落ち着け―――!!!) 情動と混乱が混ざり合って、シオンの動悸は最高潮に達する。 「ボク達、両想いだね。」 「まぁ、そういう事になるナ…」 「……。シオン。」 「今度は何だ?」 「…キスしてほしい。」 929 名前: IVRESSE [sage] 投稿日: 2005/04/18(月) 22:00:10 ID:PeUQpxbj その言葉にシオンが固まった。 (キスって……キス科の硬骨魚………なワケねーだろ!口付けのほうだよ、口付けのほう!) (…しかし本当にいいのか?酔っ払った勢いでこんな事言ってるだけかもしれんし…) (…でも、本人がいいって言ってるんだから……) (いや、やはり駄目だ!このままなし崩し的に事を進めてしまったら、ウリックにも俺にも悪いし、何よりザードに呪われそうだ!!!) シオンの葛藤が続く中、ウリックは瞳を閉じて、じっとその時を待っていた。 (…えーーっと、だから、その、やはり初めてというのは厳かであるべきで…) (……だから、そのぉ………) (………つまり、………) (…………………) (えー………) (…………………) (すまん、ザード。ここまでされて我慢出来る男がいるハズない。) シオンはウリックの顔の直ぐ傍らに両の手を置くと、軽く口付けを落とした。 触れるか、触れないかの、小さな口付け。 「……意気地なし。」 ウリックが苦笑した。 「……悪かったナ。」 《第一の関門クリア》。 シオンの脳裏を、そんなフレーズが掠めた。 が、問題なのはここからである。 一応シオンも知識として一連の大よその流れというものは知っている。 しかし、こんな風に実際にそういう事態に陥った事が初めてなので、ぶっちゃけ何をどうしたらいいかサッパリわからないのである。 930 名前: IVRESSE [sage] 投稿日: 2005/04/18(月) 22:01:59 ID:PeUQpxbj ウリックを組み敷いたまま再び動かなくなったシオンを見兼ねてかどうかは不明だが、彼女が 「全部シオンの好きにしていいんだよ?」 と言ってくれたので、シオンは取り敢えず触れたいと思った場所に手を伸ばしてみた。 髪の毛、頬、首筋、腕、足、そして衣服ごしにお腹の辺りを万遍なく撫でまわる。 その途中ウリックから「んっ、んっっ…」という、くぐもった声が漏れた。 その艶やかな声で気分が高まったシオンが 「……直接触ってもいいか?」 と、おずおず尋ねると、 「いいに決まってるじゃない。」 とにこやかに返された。シオンはウリックの腰元で服を止めてある紐をゆっくりとほどいた。 普段は気にならないしゅるり、しゅるり、という音が、この時ばかりは聞いてはいけない淫猥な音のように響いた。 そして自由になった服をめくると、今度はさらしに手をかける。 一巻き、また一巻きと外していくのに合わせて、どんどん心臓の鼓動が激しくなる。 そして最後の一枚を外し終えた時――― ドクン。 上半身裸になったウリックを見て、シオンの心臓が一際大きく脈打った。 (―――で。これをどうすればいいんだ…?) (さ、さわっちゃって……いいのか?いいんだよな。) 一人で疑問に思って一人で勝手に解決すると、シオンはその僅かな膨らみに触れた。 (あ、すげー柔けぇ……) その感触に変な感動を覚えると、いくぶん指先に込める力を強めた。 「んっ…!」 今度は明らかな反応が返ってきた。我慢出来ずにそのまま胸を揉み解す。 「あっ、は……、あっ…」 ウリックが赤い舌を見せて喘ぐと、それに吸い込まれるかのようにシオンはまたもや彼女と唇を重ねる。 「……んん…」 どちらからでもなく唇と唇、舌と舌を絡ませて、『離れたくない』という気持ちを一心不乱に体現する。 931 名前: IVRESSE [sage] 投稿日: 2005/04/18(月) 22:03:15 ID:PeUQpxbj 「はぁ…………っ」 長い長いキスを終えると、シオンは自身の額でこつん、と彼女の額を小突いた。 「…これでも意気地なしって言うか?」 ウリックはぶんぶんと顔を横に振った。それで妙な自信が湧いてきたシオンは、今度は彼女の胸に口付ける。 「っぁ、……んっ…あ…」 自分が舌を動かす度に身を捩るウリックの姿がたまらなく愛しくて嬉しくて、シオンは調子に乗って彼女のあちこちを舐め回す。 「ふぅ…っぁ、…んあ……あぅ…」 ウリックの吐息がどんどん乱れていく。それに比例してシオンの欲望もどんどん止まらなくなる。 まだシオンの中に若干残っている行為そのものに対する戸惑いより、『彼女に触れたい』という気持ちの方が遥かに上回っていた。 「…こっちも触っていいか?」 指先を下半身にずらし、少し興奮気味にウリックの耳元で小さく囁いた。 ウリックが無言で、しかしはっきりと頷いたのを確認して、彼女の秘所に初めて触れる。 ソコは既にしっとりと濡れていた。 「…っぅあっ……は…」 初めての感覚に言い知れぬ快感を感じながらも、戸惑いを隠せないウリック。 しかしそれはシオンも同様で。 (うわー………本当に濡れるもんなんだな…) と、彼女を優しく撫でつつ、声には出さずにまたも妙な感動を抱いていたのだった。 「んんっ…あっ、ぅあ……っぁん」 彼女の喘ぎが明らかに先程より激しくなったので、 「どんな感じなんだ?」 と、シオンは率直に質問をしてみた。これが他の男が他の場面で使おうものなら立派な煽りになるのだろうが、 今の彼にそんな器用な真似が出来るほど余裕はなく、純粋に、単なる素朴な疑問であった。 「どんな、って……ん…、あ、わっかんな……よっ!な…っんか、ぁ、ふわふわして……っ、ど…っか……いっちゃいそ…なの…」 932 名前: IVRESSE [sage] 投稿日: 2005/04/18(月) 22:04:45 ID:PeUQpxbj ウリックのその返答を頭の中で『キモチイイ』と意訳したシオンは、指を中に入れた。 その途端、彼女の全身がびくびくと震えたのが指先から伝わった。 「!ひぁっ……ぅぁ…んんっ」 シオンはためらわずに彼女の中で水音を奏で続ける。 「は…っぁ、んぁ……あっ、っや…」 (こんだけ濡れたらいいの…か……?) 指のみならず手のひらにまで流れて来る蜜の量から推し量るに、多分大丈夫だろう。 と結論づけたシオンは、自身の欲望をシンプルに告げた。 「お前と……ひとつになりたい。」 するとそれまで喘いでいた彼女が一瞬、見慣れた明るい笑みを零したので、その理由を尋ねてみた。 「何で笑ったんだ?」 「だって……ボクも今そう思ってたところなんだもん。二人して同じ時に同じコト思って…なんかおかしくて。」 笑顔のまま言うと、静かにシオンの首に腕を回した。 「ィ……ウリック。」 その仕草を、その笑顔を愛しく思うあまり、思わず彼女の本当の名を言葉に出しそうになった。 「痛かったら言えよ?」 彼女の首筋に軽く口付けてから、シオンは彼女の中に入っていった。 出来るだけ優しく、ゆっくりと。 「…ん…んっ、んんっ……!」 しかし既にうっすらと涙が滲んでいた彼女の瞳からは、今にも大粒の涙が溢れ出そうであった。 それでもウリックは涙を流すまいと、固く瞼を閉じて必死に耐えている。 そしてシオンが奥深くへと進むごとに、自然と彼に絡めている腕にも力が込もる。 「…俺様の方が痛いんだが。」 本当に苦しそうな声でうめくと、ウリックがくすくすと笑った。 「ごめんね、シオン…」 それで緊張が解けたのか、ウリックは穏やかな笑顔で優しくシオンに抱き付き直した。 933 名前: IVRESSE [sage] 投稿日: 2005/04/18(月) 22:06:17 ID:PeUQpxbj 「シオンって……すっごくあったかいね……」 とろける様な表情と声で言われた。 それがこの世界に存在する他のどの讃辞よりも、素晴らしいものに響いた。 「お前もあったかいぞ…?」 彼女の頭を撫でながら呟いた。その後に胸の中で (体も――――心もな………) と付け足した。 本当にそう思った。自分を求めてくれる人のいる事の、何と嬉しく、何と心強いことか――― シオンの瞳に光るものが見えたので、ウリックは日頃のお返しとばかりに意地悪く聞いてみた。 「……シオン、もしかして泣いてる?」 シオンはふっと笑い、 「……俺様が泣くわけねーだろ?」 と、何とも彼らしく答えて、そして腰を動かし始めた。 ウリックは何とかシオンの口から真相を聞き出したかったが、その後はシオンの出し入れにただただ喘ぐばかりで、 二人で頂点に達するまで彼の独壇場になったため、 結局真相はわからず仕舞いで終わってしまった。 934 名前: IVRESSE [sage] 投稿日: 2005/04/18(月) 22:07:40 ID:PeUQpxbj そして翌日。 誰よりも先に起きたシオンは、満足気にベッドの上で眠っている彼女(昨夜行為が終わってからシオンが一生懸命運んだ)の顔を直視出来ずに、 一人で食堂へ行き、一人黙々と朝食を食べていた。 見た目には極めて穏やかであったが、その心中はちっとも穏やかではなかった。 (何であんな事したんだ、俺………) 朝になって、後悔が押し寄せてきたのである。 (いや、やってしまったものはもう仕方ないんだが……) (正直めちゃくちゃ気持ちよかったけど……) (…って、そうじゃないだろ、俺!ウリックだよ、ウリックの事!) (まともに顔合わせられん……これからの旅どうすれば……) (そもそも昨夜のは酔った勢いでああ言っただけで、本当はそんな気全く無かったとしたら…!?) 一人悶々と葛藤していると、 「おっはよ〜、シ〜〜オン!」 と、景気のいい声がこだました。 「すまん、ウリック!!!」と、シオンが詫びる前に、ウリックが 「ごめん!!!」 と謝ったので、シオンは目を白黒させた。 「ボクをベッドに運んでくれたの、シオンでしょ?本当にごめんネ…」 「え?あ、あぁ…別にそんなのは大したコトは……そ、それよりもっと大事な話が……。あのな…!」 と、話を切り出そうとするシオンに気づかないのか、ウリックは彼女のペースで言葉を続けた。 「でね、言いにくいんだけど……ボク……昨日の夜の記憶が無いんだ。」 「え?」 ウリックは俯き加減で、胸の前で両手の人差し指をくるくる回しながら、心底申し分けなさそうに言った。 「シオンが出ていって…隣のおじさんからジュース貰ったトコロまでは覚えてるんだけど……そこから先全く記憶が無くて…… もしかしなくても、あれってお酒だった…んだよね……。あれだけ『お酒飲むな!』ってシオンに言われてたのに…本当にごめんネ!」 935 名前: IVRESSE [sage] 投稿日: 2005/04/18(月) 22:10:18 ID:PeUQpxbj 顔の前で両手を合わせて大声で詫びるウリック。 「わかったから、そんな大きな声出さないでくれ!」 言われてハッとすると、ウリックは素直に両手で口を覆った。 「昨晩のコト……本当に何も覚えてないのか?」 シオンは、ゆっくりと度確認する。 「うん。何にも。」 彼女はあっさり断言した。 「…本当に?」 シオンは入念に念押しする。 「本当に何にも覚えてないってば!……昨日の夜、何かあったの?」 「何にも無い、何にも無いぞぉ、ウリック!!!」 シオンが珍しく慌てふためいているので、 「???」 ウリックはポカンと口を開けてきょとんとしている。 「そうか。覚えてないならいいんだ。うん、気にするな!」 シオンはウリックの肩をばんばん叩き、半ば投げやりな態度で言った。 「うん。覚えてないんだけどね……体中がだるくて、ピリピリ痛くて、特に股の辺りが…」 「それは二日酔いだ!紛う事無く二日酔いの症状だ!だから気にするな!!」 「う…うん?」 いつもと明らかに違うシオンの様子に、ウリックは (変なシオン……) と、思いつつも、その言葉の中に“これ以上聞くんじゃねぇゾ”的オーラを直感的に感じ取り、それ以上聞かないことにした。 そしてその後の2人と1匹の旅では。 何も知らずに無邪気にウリックに抱き付かれ、その度にこの世の物とは覚えない絶叫をあげるシオン様 というシーンが、暫くの間見られるのだった。