59 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2005/06/12(日) 23:10:54 ID:5flS/KYS なんか寂れてるな…よーしパパSS投下しちゃうぞー 自分は前スレの神じゃないが、ジェンド一人エチーネタ投下します。 ―――――――――― 誰かに見られているような気がすると、ジェンドは思った。 ■ 勢いを増す雨をしのぐために訪れた無人の館は、どこか不気味さが漂っていた。 べつに怖いのではない。 ただ、戦士として養われた勘が警告しているのだ。 視線を感じる、誰かに見張られている。 しかし、カイには「気のせいだ」と笑われるだけだった。 お調子者でいい加減な(とジェンドは思っている)男だが、一応は彼も戦士だ。加えて勘はいい。 もし本当に危機が迫っているなら、身の危険を感じないはずはない。 ひとりきりになったジェンドは気を取り直し、愛剣の手入れを始めた。 そのときだった。 『くすくす……』 「く……! 何者!?」 姿を見せない声の主は、館の精だと名乗った。 そして言った。館の中は自分の意のままなのだと。 十六夜を人質にとられたジェンドには、その精とやらの命令に従うしかなかった。 『まずは部屋を全部ソージしてもらおーか』 「な!?」 それがどんなに理不尽でも、抗えば最悪、十六夜の命はない。 ジェンドは踊れと言われれば踊りながら、歌えと言われれば歌いながら掃除を続けた。 60 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2005/06/12(日) 23:17:51 ID:5flS/KYS ■ その後、「服が汚れるでしょ」「邪魔になるよね」などと言われて、可愛らしいエプロンを着けさせられたり長い髪を可愛らしく二つに結ばされたり。 遊ばれ放題のジェンドだった。 『ふふ、かわいーかわいー』 もはや文句を言うことにも疲れ、ジェンドは怒りのオーラを撒き散らしながらも、しばらく黙ってホコリをはたいていたのだが。 『でもやっぱり、ちょっと汚れちゃうね?』 「べつにっ」 ジェンドは苛々と呟いた。 今着ているエプロンは、料理のときに使ったものに比べて狭い範囲しか覆ってくれていない。 たしかに首の辺りなどはホコリの防ぎようがなかったが、ここで「はい、汚れます」と馬鹿正直に答えれば、また変なものを着せられるかもしれない。 そう思って不満は漏らさなかったのに、ジェンドの牽制は無駄に終わった。 館の精は、こちらの意思などまるで無視している。 『仕方ないナ。脱いじゃおーか』 「は!?」 『全部脱いじゃって。そうしたら服、汚れずにすむでしょ?』 「ふ、ふざけるなっ! そんな真似できるか」 『そうだね、恥ずかしいよネ。だったら、エプロンは許してあげる。エプロンだけなら着てもいいよ』 無茶苦茶な妥協案に、ジェンドはなお目を吊り上げた。 全裸よりはまだいいかもしれないが、それでも相当に恥ずかしい格好である。 「き、貴様!」 『あれ、い……いいのカナー? 十六夜のこと、忘れたの?』 61 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2005/06/12(日) 23:20:39 ID:5flS/KYS ジェンドが逆らえば、館の精は必ず十六夜の名を持ち出した。 十六夜、どうしようかな。火あぶりにでもしようかな。 そのたびに、ジェンドは抵抗を諦めなければならなかった。 (十六夜……) 十六夜を傷つけることになったら――羞恥より、そちらのほうがずっと恐ろしい。 唇を震わせて、ジェンドは着慣れた服やサラシを脱ぎ捨てた。 そして少し迷ったが、やはり一枚でも身につけているほうが安心できると思い、可愛らしいエプロンに手を伸ばす。 「くそっ……どうして私がこんなコト……」 『アハハハハ、よくできました。思ったよりキレーな体してるね』 「っ」 恥ずかしいやら腹立たしいやら。 怒りと恥とで、ジェンドの顔は真っ赤に染まっている。 『怖い顔しないでヨ。もっと笑って笑って。ね?』 「…………」 笑いたくても、この状況で上手く笑えるほどジェンドは器用ではない。 どう頑張っても、頬を引きつらせることしかできなかった。 『うーん、そんな可愛い髪型して、可愛いカッコしてるのに。もったいナイ』 「くっ……」 『あ、そーだ。せっかくの可愛いカッコなんだからネ。  おソージはちょっと一休みして、ひとりえっちでもしてもらおうカナ』 「んなっ!?」 突拍子もない提案に、ジェンドは目を丸くする。 そんな恥ずかしい行動まで強要されるとは思ってもみなかった。 62 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2005/06/12(日) 23:25:57 ID:5flS/KYS 「冗談じゃねー! だ、誰がそこまで!」 『そーゆー反応するってコトは、知ってるんだ? やったコトもあるのカナ』 「……ぐ……」 正直、したことはある。 けれど回数は決して多くないし、気も乗らないのにいきなりやれと言われても、どうすればいいのか戸惑ってしまう。 それでも館の精は容赦がなかった。 『ほら、早くー。早くしナイと、十六夜を』 「わ、わかった! わかったから……!」 観念して、ジェンドは長い息を吐き、おそるおそる右手をエプロンの下に滑り込ませた。 ほかでもない女の証の、柔らかな膨らみに触れる。 「…………」 はたきを握ったままだった左手も強張り、自然と力がこもる。 気持ちよくなどなかった。 気分の問題もあるだろうし、特に感じる部分は避けていたからだ。 しばらくこうして適当にやっていれば、やがて精とやらも飽きて「掃除に戻れ」と言うのではないか、という期待もあった。 『フーン、そんな顔してするんだ。そーゆーときってサ、何考えてるの?』 「べつに……何も」 『十六夜のコト? それとも、あのカイっていうお兄さん?』 「っ!?」 びく、とジェンドが身を震わせた。 『キャハハハ、当たってる? ねえ、どっちカナ?』 「違っ……そういう、コト……」 63 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2005/06/12(日) 23:28:12 ID:5flS/KYS 見慣れた男の顔が、ちらりと脳裏をかすめる。 ジェンドは慌てて、大仰に首を振った。 たしかにいつもなら、ひとりでするときには自然と彼の顔が思い浮かぶ。 けれど今は、できるだけ考えないようにしていた。 彼のことを考えると、顔を思い出すと、見られているにも関わらず本気になりそうで怖かったから。 「何も……今は……」 これはやらされているのだ。 好きでやっているわけじゃない。 こうしないと十六夜の命がないから。 だからあいつのことなんて思いもしないし、気持ちよくも何ともないのだ。 ジェンドは胸中で、焦る自分に言い聞かせた。 『ねー、当たってるんでしょ。じゃあいっつも、その人にそーゆーコトしてもらってるんだ。気持ちいい?』 「う……るさ、んな、っコト……」 『くすくすっ。“ジェンド、可愛い”って、よく言われない?』 「っ……」 言われる。 何が可愛いのか自分ではさっぱりわからないが、二人きりになったときや、情事の最中にもあの男は言うのだ。 ジェンド、可愛いよ、大好きだよ――と。 「…………ぁ……」 『くすくす……いいよ、その表情。やっぱり、可愛い顔できるんじゃない』 「!」 指摘されるまで、ジェンドは自分の状態に気づかなかった。 64 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2005/06/12(日) 23:30:08 ID:5flS/KYS そういえば息が熱い。 身体の奥もじわりと熱い。 胸を緩慢にまさぐっていた右手は、いつの間にか動きを速めている。 「やっ、あ……」 半ば勝手に動く(気がする)指先が、胸の突起に触れる。 そこはすでに硬くなり始めていた。 ジェンドはぞっとした。 それは快楽に飲み込まれつつあることへの恐怖か、それとも最高の快感を待ちわびる本能の悦びの声か。 正体のわからない不安が、混乱を助長した。 「ん……っ」 ただ、とにかく歯を食いしばり、何とか声を漏らさないように努める。 「う……ふっ……」 『我慢しないで、声出せば? いい声してるのに』 「ふざけ、あっ……ん!」 思わず反抗した際に情けない声がこぼれ、膝が震えた。 このまま立っていては倒れてしまいそうだ。 ジェンドは力なく、革張りのソファに座り込む。 さらけ出した背中が革に触れた折に感じた、冷たい感触が心地好い。 心地好いが、それはまずい。 ジェンドは本格的に焦った。 「も……もう、いいだろうがっ」 『イキナリ何を言うの? まだ途中でしょ?』 「ここまですれば……もう……」 65 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2005/06/12(日) 23:31:52 ID:5flS/KYS その先は言えない。 伝えたい内容は明確なのに、上手い言葉が見つからなかった。 許してください、の一言を口にするのはそれこそプライドが許さない。 しかし、目は口ほどにものを言う。 ジェンドの双眸は、明らかに「勘弁してくれ」と訴えている。 そんなジェンドに、館の精はやはり容赦のない言葉を浴びせた。 『ヤだよ。最後までしてヨ、見たいもの。自分だって、今さらやめるなんて我慢できるの?』 「は? 何言って」 『とぼけたってダメだよ。感じてるんじゃナイの? 濡れてるヨ』 ジェンドは言葉を失った。 濡れている? まさか。 そんなわけない、そんなはずはない、そう思い込もうとしながら、右手を下半身に持っていく。 ――ぬるり。 「……!」 そんな擬音が似合う感触に驚いて、反射的に手を引っ込めた。 触ったのはほんの一瞬だったが、右手の人差し指はたしかに細い糸を引いている。 ぬらぬらと光る糸は、たった今触れた場所から繋がっていた。 否定できない物的証拠に、かあっと顔が熱くなる。 『気づかないぐらい気持ちよかったんだ?』 「っ……!」 気がつかなかったのは事実だ。 けれど、気持ちよくなんてない。 自分はそんなに浅ましい生き物ではないはずだ。 気持ちよくなんて。 気持ちよくなんて…… 66 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2005/06/12(日) 23:35:10 ID:5flS/KYS 「んっ……」 きゅう、と胸の奥が締め付けられるような、切ない感情が湧きあがる。 そしてその切なさに賛同するように、身体の奥が疼いた。 この切なさはなんだろう、と考える。 行為を強要された怒りとも違うし、悔しさでもなく、悲しみなんてまったく違う、この感情は。 (……物足りない……?) 『ここまで来たんだカラ、素直に気持ちよくなりなヨ』 言葉は、まるで悪魔の誘いのように甘美に響いた。 今までは単なる耳障りな声だったのに、今ではこの上ない誘惑の囁きに聞こえてしまう。 認めたくない。 そんなこと、認めたくない。 けれど事実、ジェンドの身体は疼いている。 物足りなさは、もしかしたら、昂ぶったまま放置されている身体が続きを要求しているのかもしれない。 『いーじゃない。素直になればあなた自身も楽になるし、十六夜も助かるんだヨ。何を迷うの?』 「十六夜も……私も……」 そうだ、いいじゃないか。 行為さえ済ませれば、十六夜が助かるのだ。 見ている相手はまったく知らない、明日ここを発てばどうせ二度と会うことのない者。 今までも、明日からもずっと一緒にいる十六夜やカイとは違う。 今だけ我慢すれば……いや、我慢ではない。これは。 ――素直になれば、いいんだ。 魅惑的な熱さに浮かされたジェンドの頭は、正常に働いているとは言えなかった。 「……あ……ん、んっ……」 67 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2005/06/12(日) 23:38:29 ID:5flS/KYS からん、と乾いた音を立て、はたきが床に転がった。 はたきの布の先に付いていたのか、せっかく綺麗に掃いた床にホコリが舞い散る。 そんなことを気遣う余裕もない。 右手が再び胸をまさぐる間、左手は知らぬ間に秘所に向かって進んでいた。 『そーそー。素直な方が可愛いヨ』 もう館の精の煽りさえ、興奮を高める材料にしかならない。 やや性急に、茂みを分けて指を進める。 ぷっくり膨らんだ敏感なそれに、つまむように触れた。 「ひゃ……っあ、あん!」 そこを中心に電流が流れたような刺激を受け、のけぞって声を上げる。 この快感が欲しかった。 夢中になって、その膨らみをこねくる。 「ふ、うっ……あ、あ、あ……んふぅっ」 そうしてしばらく弄っていると、秘部がさっきよりも湿っていることに気がついた。 恥ずかしさよりも失望よりも、安堵が先に立つ。 これなら指を入れても痛くなさそうだ、と。 そんな今のジェンドだから、戸惑いも躊躇いもなかった。 「はあ……あああ、い……やあっ! ああ、ん……」 ずぶ、じゅぶ、くちゅ。 いやらしい水の音が響くが、構わず指を自身の中に突っ込む。 侵入を悦ぶように、ぞくぞくと全身が震えた。 68 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2005/06/12(日) 23:40:25 ID:5flS/KYS この感覚は、嫌でもあの男を思い出してしまう。 誰でもない、彼に植えつけられた感覚だから。 でも、してもらうのに比べると、明らかに足りない。 (あいつはっ……あのときは、もっと……) 「あ、あ……んく、ふぁあっ!」 なまじ快楽の味を知っているだけに、余計な期待と興奮が行為を加速させた。 もう、何も考えられない。 早く、早く気持ちよくなりたい。 それだけがジェンドを突き動かしていた。 「も……だめ、やだ……あ! あ、あああ……っ!」 いっそう激しい電流が流れる。 びくっと大きく震えたかと思うと、ほんの少しの間を置いて、ジェンドの身体は弛緩した。 「…………ぁ……はあ……はあ、あ……」 酸素を求めて、ジェンドはせわしなく、空気を繰り返し吸っては吐いた。 瞳はとろんとして潤み、上気した頬は赤い。 汗がしっとりと身体とエプロンをくっつけて、少しだけ気持ちが悪かった。 ぼんやり宙を彷徨わせていた視線を下に下げると、分泌した液に濡れ、出し入れした数本の指がてらてらと妖しく光っている。 『……くすくす』 「!?」 『気持ちよかった? 素直になってよかったネ』 そういえば――この声の存在を、すっかり忘れていた。 見られてもいいと結論づけたはずなのに、今ごろ冷静になって、これ以上ないという恥ずかしさが押し寄せる。 69 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2005/06/12(日) 23:44:18 ID:5flS/KYS 「い……い、十六夜は、無事に返してもらえるんだろーな!」 それを隠すように、ジェンドは叫ぶ。 館の精は楽しそうにくすくす笑いながら答えた。 『もちろん返すヨ。ソージが終わったらネ』 「は!?」 そういえば、もともとは掃除をしていたのだった。 途中で方向がそれて、こんなことになったのだ。 部屋全部という要求に対し、ジェンドはまだ半分も仕事を終えていない。 それを今から再開しろと言う。 ぐったりと全身をソファに預けていたジェンドは、乾いた喉にツバを流し込んで、まだ呼吸を乱れさせたまま言った。 「……まだ……させる気か」 『あっ! せっかくイイ顔になったのに、そんな怖い目しナイでよっ』 十六夜がどうなってもいいの? そう言われては、従うしかない。 「……クソッ」 ジェンドは苛立ちを覚えながら、床に落ちているはたきに目をやった。 十六夜のため。 重く感じる身体に鞭打って、腰を上げる。 久しぶりに一人でのんびりくつろげる夜だと思ったのに、今晩はのんびりどころか眠れそうにすらなかった。 ■ そんなことが起きているとは露知らず、十六夜はカイの部屋でぐっすり眠っているのだった。    終